中国テクノロジー業界をリードするテンセント・ホールディングス(騰訊)やアリババグループなどの7-9月期決算は、経済・地政学的な不確実性が響き、期待外れな内容となった。投資家を呼び戻せるかどうかは、ますます政府の動きにかかってくるかもしれない。

中国インターネット業界のパイオニアらは投資家との電話会議で、不均衡な経済が自社の事業をむしばみ、見通しを曇らせている状況を説明。その大半は晩夏に打ち出された前例のない政府の景気刺激策が事業運営に寄与するだろうと慎重ながらも楽観的な見方を示し、投資家に忍耐を求めた。しかし、かつてシリコンバレーに挑み、中国の民間経済を特徴付けたこれら企業には新たなアイデアや野心的な目標が不足していた。

この1週間で、中国の大手テクノロジー企業5社から計410億ドル(約6兆3000億円)の時価総額が消失。香港上場のハイテク大手30銘柄で構成されるハンセンテック指数は弱気相場に突入した。22日には、第2次トランプ政権を巡る懸念と、中国政府による財政刺激策の展開ペースへの不満が相まって、中国株売りに拍車がかかった。テクノロジー大手の好業績で市場の熱狂が再燃することを期待していた投資家にとって、今シーズンは期待外れに終わりそうだ。

ナティクシスのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は、事業環境が「5年前よりもはるかに悪化しているだけでなく、中国が新型コロナウイルスを封じ込めるゼロコロナ政策を推進していた2022年ごろよりもさらに悪い状況だ。このセクターは明らかに中国の産業政策と米国との技術競争に勝つという意図に支えられているが、それと同時に問題も多い」と語った。

政府の景気刺激策を背景とする9月下旬の相場上昇が失速する中、政府に追加措置を求める圧力が強まっている。

アリババとテンセントはかつて時価総額1兆ドルに迫り、アナリストの間で米国の競合企業にもたらす脅威が取り沙汰された。アリババは米アマゾン・ドット・コムのクラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と世界で顧客獲得競争を展開し、テンセントはコンテンツをソーシャルメディアやオンライン金融と融合させ、比類なきフィンテック・インターネット帝国を築くという野望を抱いていた。

しかし、同セクターの力が強過ぎると判断した中国政府が20年に締め付けを強化して以来、その勢いは衰えている。一時は中国経済の急成長を追い風に羨望(せんぼう)の的となるほどの伸びを誇っていたが、今では国内での長引く消費低迷や明白な成長エンジンの欠如、海外事業進出の高いコストに見舞われている。

大和キャピタル・マーケッツ香港のアナリスト、ジョン・チョイ氏は「この業界はかつてのように構造的な成長をけん引する存在とは考えられなくなった。つまり以前よりもはるかに循環的なものになったということだ。政策刺激はこうした企業の成長をある程度加速させる上で重要な役割を果たすだろう」と指摘した。

原題:China Investors Digest Another Letdown From Big Tech Earnings(抜粋)

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