21日の日本市場では、債券相場が下落。日本銀行の早期利上げ観測が根強い中、午後の植田和男総裁の講演に対する警戒感も重しとなり、新発5年債利回りは約15年ぶりの高水準を更新した。

この日実施された20年国債入札は無難に通過したものの、相場全体を押し上げる材料とはならなかった。外国為替市場の円相場は、対ドルで一時154円台後半まで上昇。地政学リスクへの警戒が根強い上、公示仲値の設定に絡む円買い需要もあった。株式相場は米半導体メーカーのエヌビディアの株価が決算発表後に下落したことが嫌気されている。

政府は物価高への対応などを柱とした総合経済対策の財政支出の規模を21兆9000億円程度とする方向で調整に入ったとNHKが21日報じた。ただ、ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は報道内容について「想定の範囲内」とし、大幅に国債の需給が悪化するような事態は回避されそうとの見方を示している。

債券

債券相場は下落。日銀の早期利上げ観測が根強い中、午後の植田総裁の講演に対する警戒感が重しになっている。この日行われた20年国債入札は無難に通過したが、相場を押し上げるには至ってない。政府の新たな経済対策については、予想範囲内の規模で相場への影響は限られている。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、20年入札の結果は無難で、「利回り水準がそれなりに高く、応札倍率も高かった」と指摘。一方、「日銀の早期利上げが意識されてきており、この時点で金利が低下していく方向に賭けていく状況ではない」とも述べた。

20年債入札の最低落札価格は98円45銭と市場予想(98円50銭)を下回った。小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は13銭と前回29銭から縮小。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.52倍と、前回の3.04倍から上昇した。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は、対ドルで155円ちょうど付近で推移。一時154円台後半に上昇した。ウクライナとロシア情勢を巡る地政学リスクへの警戒が根強い上、公示仲値の設定に絡んだ需要も円を押し上げた。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、ウクライナ軍が英国製のミサイルを発射したことでリスクオフ的な動きが出ているほか、エヌビディア株や日本株が下げていることで円買いが進んだと分析。ドルが買われ過ぎた反動もあると言う。ただ、「米利下げ期待は高まってこないため、ここからさらにドルを売る動きも出にくい」と話した。

三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長も、流動性が低下する中、一部資金フローの動きで円が買われているとの見方を示していた。

株式

東京株式相場は続落し、日経平均株価は一時400円以上下げた。人工知能(AI)向け半導体の米エヌビディアの売上高見通しが市場予想の上限に届かず、株価が時間外取引で下落したほか、為替の円高推移が嫌気された。

アドバンテストなど半導体製造装置株の一角が下げ、三菱重工業など機械株、日立製作所など電機株といった輸出セクターが軟調だ。ニューヨーク原油先物の下落を材料に鉱業株も安い。

半面、フジクラなど電線を中心に非鉄金属株は高く、金利上昇を背景に銀行株も堅調。電線銘柄は、エヌビディアのデータセンター部門が四半期としては過去最高の収益を記録したことが材料視された。東証33業種は28業種が安く、5業種が高い。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、エヌビディアの株価下落で市場心理は落ち込んでいると指摘。しかし、決算の結果自体はネガティブなものではなく、半導体関連株の下げは限定的になるだろうとの見方を示した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:日高正裕、酒井大輔、田村康剛.

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