(ブルームバーグ):野村ホールディングス(HD)が日米金融当局に提出した半期報告書に、事業のリスクとして、「役職員による顧客への犯罪行為」を新たに加えたことが分かった。
14日付で提出した2024年4ー9月期の半期報告書で、「事業等のリスク」のうち、6月に公表した有価証券報告書に記載のあった「役職員または第三者による不正行為や詐欺」に関するリスク内容を追加した。
具体的には、役職員による上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽(いんぺい)に加え、新たに「顧客に対する犯罪行為や違法行為等の不正行為」が、野村HDのビジネスに悪影響が及ぶ可能性があると説明した。
また、米証券取引委員会(SEC)に提出した英文の半期報告書でも、役職員または第三者が当社の事業に悪影響を及ぼす不正行為をするリスクは常に存在する、と盛り込んだ。不正行為には、顧客またはその家族に対する犯罪やその他の不法行為が含まれるとも記した。
日米での開示書類におけるこれらの追加は、傘下の野村証券で相次いだ社員による不祥事を受けた動きで、株主や顧客を含めたステークホルダーに新たな事業リスクを示した形だ。顧客に対する犯罪行為などを事業リスクの1つとして明示したことで、そうした行為を防ぐための対策の実効性がより問われることになる。
日本取締役協会の冨山和彦会長は20日の定例会見で、金融業界での不祥事について、各社は不正な行為を防ぐために多くの経費や膨大な時間、エネルギーを使っていると指摘。その上で、規律を正すための対策を継続的に講じることは「宿命的にやっていかざるを得ない」との見方を示した。
野村HDの広報担当者は、開示文書以上のことはコメントを差し控えると電子メールでコメントした。
野村証では社員だったトレーダーによる国債先物の相場操縦が9月に発覚。その後、財務省は同証の日本国債の市場特別参加者(プライマリーディーラー)資格を一時停止し、金融庁は課徴金納付命令を出した。また、同証の元社員が顧客に対する強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で11月20日に起訴された。
野村証では国債相場操縦問題を踏まえて、モニタリング体制を高めるための新部署を設立するなどの対策を発表。元社員の逮捕を受けて、当面の措置として、ウェルス・マネジメント部門の社員による顧客の自宅訪問については事前承認が必要となるルールを導入するなどしている。
日本で開示した半期報告書によると、国債取引での相場操縦問題で「一部の顧客は野村との取引を控えており、収入に影響を与える可能性がある」と記述した。
(情報を追加して記事を更新します。更新前の記事では8段落目の起訴の日付を訂正済みです)
--取材協力:谷口崇子.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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