(ブルームバーグ):20日の日本市場では株式が反落。ウクライナ情勢や米エヌビディアの決算発表に対する警戒感がくすぶり、朝高後失速した。 円相場は1ドル=155円台に下落している。
ウクライナが米国製の長距離地対地ミサイルでロシア領の軍事基地を初めて攻撃し、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用基準を緩和したことを受け、地政学リスクが改めて意識されている。一方、20日発表のエヌビディアの決算は、日本株も含めた株式相場の方向性を決定付ける重要なカタリストになるとみられており、市場には様子見ムードも漂う。
東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、国内決算がさえず、積極的な買い材料に乏しいだけに、ウクライナ情勢など外部環境を警戒しやすいと指摘。エヌビディア決算も高い市場期待に届かなければ、米国株全体や日本株が下に引きずられかねないとみている。
株式
株式は下落。米国債利回りの低下を受けて銀行など金融株が売られているほか、自動車や商社も安い。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、米大統領選後のトランプトレード急増後、市場は正常化し始め、投資家は企業業績により注目していると指摘。投資家はエヌビディアの決算発表を待っており、様子見ムードだと述べた。
銀行株や損保株、自動車株がTOPIXの下落をけん引している。一方、創業家が年度内に買収を完了させる案を軸に調整していると報じられたセブン&アイ・ホールディングス(HD)株を中心に、小売株は堅調。
個別では、アクティビスト(物言う投資家)として知られる米ヘッジファンド運営会社エリオット・インベストメント・マネジメントの5%超の株式保有が明らかとなったことを受けて、東京ガス株が急騰。カドカワの買収に向けて協議していることが前日に判明したソニーグループとカドカワの株価も上昇している。
為替
円相場は1ドル=155円台に下落。ウクライナ情勢の悪化を受けて海外市場で円は安全資産として買われる場面もあったが、米ロ両政府関係者の発言でリスク回避が和らぎ、円売りが優勢になっている。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、来年のトランプ政権誕生を意識するとドルは売りにくいと指摘する。今後公表される米指標が強い数字になれば、12月の利下げ見送りの可能性が高まることに加え、資金需要が高まる年越えのドル調達コストが上がっており、ドルを押し上げる方向にあると言う。
米国家安全保障会議(NSC)報道官は19日、ロシアの核ドクトリン改定は米国が自国の核指針を調整する根拠にならないと発言。ロシアのラブロフ外相は、核戦争が起こらないようあらゆる手を尽くすと述べた。
債券
債券相場は先物が下落に転じた。ウクライナ情勢を巡る警戒感から安全資産と見なされる債券を買う動きが一服。21日の20年国債入札を控えた売りや日本銀行の追加利上げに対する警戒が重しとなっている。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、20年国債入札が警戒される中、「日銀の追加利上げ観測もあり、利回りが下がっていく環境ではない」と指摘。リスク回避の動きは米国市場の時間帯で落ち着き、円債も先物の夜間取引である程度消化したとの見方を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:長谷川敏郎.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.