米大統領選でのドナルド・トランプ氏圧勝を受けて米資産は買われたが、米国債は例外だった。

トランプ政権2期目がビジネスに好影響をもたらし、すでに好調な経済をさらに活性化させるという楽観的な見通しから、米株とドルは急上昇。一方で米国債は売られ、利回りは数カ月ぶりの高水準に達した。

この売りは、有権者の強力な一角からの警告だ。いわゆる「債券自警団」は、減税や関税の政策を実施する「前例のない」権限を国民から負託されたと主張する自称「借金王」のトランプ氏を監視している。

市場は金利を上昇させることによって、インフレを引き起こし国家債務を膨らませる見なされる政策にペナルティーを科すことができる。借り入れコストの上昇は米経済に影響し、成長や他の市場を減速させる可能性がある。

1980年代初頭に「債券自警団」という言葉を考案したベテランストラテジストのエド・ヤルデニ氏は「これは米国にとって、そして債券市場にとって、新たな時代の始まりだ」と述べた。

「トランプ氏がこれほど多くの支持を得て当選したという事実は、同氏に米国だけでなく世界規模でも途方もないほどの権力を与えることになるだろう」と指摘し「債券市場は当然、すでに大幅な赤字を抱えている米国が景気刺激的な財政政策を続けることを懸念している」と語った。

10年物米国債利回りは6日、ほぼ0.25ポイント上昇し一時4.48%と7月以来の高水準に達した。

ヤルデニ氏を含む投資家は、トランプ氏の財政政策が投資家の怒りを買えば10年債利回りが再び5%に達する可能性があるとみている。

債券自警団の活動が再び活発になっているのは米国だけではない。フランスと英国でも最近、財政政策に規律を課そうとする動きがあった。

米国では、超党派の議会予算局(CBO)が6月、慢性的な赤字により米国の負債が2034年末までに約48兆ドル(約7392兆円)に達するとの予測を発表した。

超党派の非政府組織(NGO)「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」は先月、トランプ氏の政策により米政府債務は2035会計年度までに、現在の予測レベルから7兆7500億ドル増加すると推計した。

CRFBは増加幅を1兆6500億ドルから15兆5500億ドルと推計しているが、すでに上院は共和党が多数派となり、下院も共和党が優勢となっているため、共和党が議会を独占する可能性が高まっている。そうなると、トランプ氏の計画が政治家によって阻止される可能性は低くなる。

RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「財政政策は今日、米国の赤字と債務の規模から、われわれ投資家にとってより重要なものになっている」と述べた。

5日の投票に先立ち、米国の債券利回りおよびインフレ期待はすでに上昇傾向にあった。長期金利の動向を示す市場指標である10年物ブレイクイーブン・レートは4月以来の高水準となる2.43%まで上昇していた。

トランプ氏の政策はインフレを招くものと考えられており、一部のエコノミストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が7日に0.25ポイントの利下げをした後、従来予想よりも小幅な利下げを実施する可能性があるとみている。これも債券相場への圧力となる。

投資家が長期債を保有するリスクに対する補償として求めるいわゆる「期間プレミアム」も上昇している。ニューヨーク連銀の10年物期間プレミアムモデルでは、9月のマイナス29ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)から、11月4日時点には約22bpに上昇していた。

ニューバーガー・バーマンのシニアポートフォリオマネジャー、ロバート・ディシュナー氏は「政府は、予算管理に注意を払わないと投資家から高い報酬を要求される可能性があることを念頭に置く必要がある」と述べた。

原題:US Yield Spike Sends Message to Trump: Bond Vigilantes Are Awake(抜粋)

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