7日の日本市場では長期金利が上昇して約3カ月ぶりに1%台に乗せた。米大統領選での共和党候補ドナルド・トランプ氏勝利を受けて財政悪化懸念から米長期金利が急上昇し、日本でも債券が売られた。金融当局のけん制発言で円安はいったん止まっている。

トランプ氏(左から2人目)

新発10年国債利回りは一時3.5ベーシスポイント(bp)高い1.015%と8月1日以来の高水準を付けた。インフレ懸念に加えて9月の基本給が32年ぶりの高い伸びとなり、日本銀行の早期利上げ観測を後押しした。円相場は三村淳財務官の円安けん制発言で買い戻された。金利上昇で株式市場では銀行株が高い。

米連邦議会選でも共和党が上院で勝ち、下院は接戦だが「トリプルレッド」(共和党が大統領と上下両院で勝利)の可能性がある。市場はこれから共和党の具体的な政策や実現時期を見極めていく。日本時間8日未明に結果が分かる米連邦公開市場委員会(FOMC)については0.25ポイントの利下げを市場はほぼ100%予想している。

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SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストはトリプルレッドの場合、金利は全般に上昇、為替はドル高圧力が膨らみ長期に残存すると7日付リポートで予想。株価は基本的に年内上昇だが、来年は政策実現度合いと外交・防衛関連についてのトランプ氏のスタンスが重要と指摘した。

債券

7日の債券相場は下落。長期金利は約3カ月ぶりに1%台に乗せた。トランプ氏の勝利で米長期金利が上昇した流れを引き継いだ。10年国債入札は無難から弱めの結果となった。

トランプ氏勝利で米金利上昇、ドル高・円安、米株大幅高になっていた。パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、FOMCで利下げはあるだろうが、米指標が良くなる中で利下げが先行きどのくらいできるか分からないとした。米金利は上がりやすいとして「米金利高に日本の金利が引っ張られている」と述べた。

入札結果によると、最低落札価格は99円08銭と、市場予想99円10銭を下回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は4銭と前回の2銭からやや拡大した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.13倍と、前回の3.53倍から低下した。

新発2年債利回りは0.50%、新発40年国債利回りは一時2.61%に上昇し、ともに約16年ぶりの高水準を更新した。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

東京外国為替市場では円が一時1ドル=153円台後半まで上昇した。

SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は「特に材料はなく、ポジション調整以外は考えにくい」と指摘。トランプ氏の勝利でドルは上値を試しにいったが、押し返されており、「トランプ氏の勝利ではしゃいだ分、少し落ち着いてきたということだろう」と述べた。

三村財務官の円安けん制発言に加え、9月の所定内給与が1993年1月以来の高い伸びとなって早期利上げ観測も高まり、円は午前中から買われていた。

三村財務官は7日、為替相場で円安が進行していることを受け、行き過ぎた動きに対しては適切な対応を取ると市場をけん制した。財務省内で記者団に語った。厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、9月の所定内給与は前年同月比2.6%増となった。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、やや円高に振れているのは利益確定のドル売りだろうと指摘。トランプ氏の大統領選勝利で「流れは完全にドル高になっており、三村財務官の発言も賃金の上昇も円安抑制にはあまり効いていない」と語る。短期的にドルは155円を付けにいき、年内に160円を目指すとみる。

株式

東京株式相場は金融株が買われてTOPIXが上昇。トランプ氏勝利で関税や輸出規制を巡る懸念から半導体関連銘柄が安く、日経平均株価は下落した。

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インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、トランプトレードは日本株買いの最大の原動力だとしながら、共和党が下院で勝利して米国の通商政策が明確になるまで上昇は限定的かもしれないと語った。

半導体関連株はトランプ氏が中国に対してより厳しい貿易政策を発動するとの懸念からレーザーテック、SCREENホールディングス、ディスコが一時4%超下落した。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、中国に対する規制がどうなるか懸念されていると述べた。

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