(ブルームバーグ):トランプ前米大統領のホワイトハウス返り咲きは、「MAGA(米国を再び偉大に)」という同氏のスローガンを反映した10年にわたる投資戦略に新たな弾みをつけており、2016年のプレーブックを再現させている。
米大統領選を制したトランプ氏が、国内景気を促進し米経済を海外との競争から守る政策を打ち出すとの観測から、米国が世界市場より好調になると有利になる資産を買う「米国第一」のトレードは6日に強力な追い風を受けた。
減税が大企業や中小企業に恩恵となり、関税が国内の製造業復興を後押しし、米国の働き手に資するとの期待感が台頭。
S&P500種株価指数に連動する上場投資信託(ETF)(ティッカー:SPY)は2.5%上昇した一方、先進国の株式に広く投資するETF(同IEFA)は1.4%下落した。こうした乖離(かいり)が見られたのは、トランプ氏が大統領選で初勝利した16年以来だ。
ローゼンバーグ・リサーチの創業者、デービッド・ローゼンバーグ社長は米国資産を選好する「リスクオン」ラリーに触れ、「ステロイド剤を使ったパワートレードだ」と指摘した。
「メイド・イン・アメリカ」を投資テーマとする2本のETFは急伸。
「ファースト・トラスト・RBAアメリカン・インダストリアル・ルネサンスETF」(同AIRR)は8%上昇し、「テマ・アメリカン・リショアリングETF」(同RSHO)は6%高。両ETFとも過去最高値を更新した。

トランプ氏の破壊的とも言える保護主義政策が注目される中で、新興国株は下落し、過去2年で最も大きく米国株に後れを取る格好となった。
2期目のトランプ政権で経済成長が加速し、インフレが加速するとの見方から、米国債利回りは急上昇した。
ブルームバーグのコラムニスト、キャメロン・クライス氏が集計したデータによると、米5年債利回りは13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した一方で、同年限のドイツ国債利回りは9bp低下し、1990年代初頭の東西ドイツ統一以来、異例の対比を示した。
しかし、一見したところ、トランプ氏の政策は国内経済に全面的にプラスというわけではない。
例えば、関税は、国内総生産(GDP)と企業収益に打撃を与える恐れがあり、政府の財政赤字を増大させかねないと予想されている。
それでも投資家は今のところ、疑わしいものの好意的な見方をしており、規制緩和や減税など企業寄りの政策から得られる潜在的な恩恵に着目している。国内の経済成長の影響を最も受ける中小企業の株価指数は6%高、地方銀行の株価指数は13%上げた。

JPモルガン・チェースのニコラオス・パニグリツグルー氏らストラテジストによれば、米国第一のトレードは比較的堅調な経済と時期が重なっており、トランプ政権1期目では関税賦課後に米経済成長が加速したという。
6日のリポートで「長期的に見ると、トランプ氏の勝利はいわゆる米国例外主義を強化する公算が大きい」とJPモルガンのストラテジストは予想。「トランプ政権2期目では、2025年の早い時期にも米国の関税が他国に課されるかもしれず、米経済の今の好調さは来年も続く可能性がある」との見方を示した。
原題:‘America First’ Sweeps Wall Street With Echoes of 2016 Playbook(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.