欧州のトレーダーたちは、米大統領選挙の余波を先取りしようと、ヘッジを行っている。

欧州にとって、共和党候補ドナルド・トランプ氏の関税引き上げ提案は重要だ。関税は米国への依存度が高いセクターに打撃を与え、ユーロをドルに対して大幅に下落させるだろう。

いずれの候補も支出を増やす計画を立てていることも、欧州の金利見通しを複雑にする。

予測は、非常に接戦になることを示している。最終的な世論調査でカマラ・ハリス副大統領の支持率が上昇したことから、市場はトランプ氏の勝利を予想したポジションを解消し、よりバランスの取れたポジショニングへと移行している。

どちらの結果に対しても条件反射的に急激な反応が起こりやすい状況だ。

5日の投票を前に市場が示しているシグナルと、それが通貨および債券の見通しにとって何を意味するかを見てみよう。

ユーロの苦境

ユーロの翌日物のヘッジコストは4年以上で最高に急上昇した。トレーダーはドルの一段高を予想しているが、ユーロはその影響を大きく受ける可能性が高い。

 

米ドル高に賭けることは、トランプ氏勝利に賭ける最も一般的な方法の一つであり、米ドルがユーロ、ポンド、ノルウェー・クローネに対して上昇した場合に利益が出るオプションが人気を集めていることが、米証券保管振替機構(DTCC)の10月のデータから明らかになっている。

ユーロは中でも最も人気の高い取引の一つとなっており、10月29日時点でトレーダーは4年ぶりの規模のショートポジションを保有していた。

 

中には、ユーロが対ドルでパリティー(等価)まで下落すると予想する向きもある。この見方は、トランプ氏が勝利し欧州製品に関税を課した場合にさらに勢い付く可能性がある。来年7月までにユーロが1ドル以下に下落すると予想するポジションは先月、約46億ユーロ(約7600億円)と9月の3億6600万ユーロから増加していた。

 

一方、オプション市場はスイス・フランに対して強気だ。フランはリスクからの逃避先としての役割から恩恵を受けている。

 

債券市場

欧州債は、米国債よりは好調だ。大統領選の結果がどちらになろうとも、米国では財政支出拡大が見込まれるためだ。その結果、10年物米国債のドイツ国債に対する利回り上乗せ幅は先週が200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)まで拡大し、5月以来の高水準となった。4日に米国債が上昇したことでこのプレミアムは縮小したが、選挙後の情勢によっては220bpを超える5年ぶりの高水準まで拡大する可能性もある。

一方、トランプ氏が当選しウクライナの対ロシア戦争への資金援助を取りやめた場合、その支援のための資金をユーロ圏に求める圧力が高まり、ユーロ圏はより多くの借り入れをせざるを得なくなる可能性がある。その結果、借り入れコストが上昇し、米国債との格差が縮小するかもしれない。

 

金利

米国の成長見通しが良好で政府支出の拡大が見込まれることから、欧州中央銀行(ECB)は、米連邦準備制度理事会(FRB)よりも速いペースで利下げを行うとみられている。

今後1年間について見ると、利下げ幅は両中銀とも125bp程度が見込まれているが、ハリス氏が勝利した場合FRBは現在の路線を維持する可能性が高い一方、トランプ氏勝利の場合その関税計画が、FRBの利下げ幅縮小への賭けを促す可能性がある。

 

原題:European Traders Look to Hedge Tariff Risk as US Heads to Polls(抜粋)

(第11段落とチャートを追加します)

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