(ブルームバーグ):米国史上例を見ない接戦となった今回の大統領選は5日、投開票の日を迎えた。民主党候補ハリス副大統領は黒人有権者の票取り込みに最後の追い込みをかけた一方、共和党候補トランプ前大統領は自身の支持層による暴力行為はないと述べた。
少なくとも8300万人が期限前投票を済ませており、選挙の結果、およびそれがいつ明らかになるのかという不安が全米で渦巻いている。 激戦州であるペンシルベニア州の投票所で長い列が報告された以外、今のところ投票はスムーズに行われているようだ。
米国初の女性大統領を目指すハリス氏は、黒人有権者の支持固めに力を入れた。同氏にとって重要な有権者層をトランプ氏が切り崩しているという結果が、世論調査に示されている。ハリス氏はアトランタのラジオ局インタビューで、黒人男性向けの政策焦点は「資金へのアクセスから、父親たち、特に若い父親のために何をすべきか」に至るまで「多岐にわたる」とアピールした。

ハリス氏はこれまでの演説で、トランプ氏を米国民主主義への脅威と呼び、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)の保護や、住宅費および医療コストの引き下げを公約した。それでも同氏のキャンペーンは7月のバイデン氏撤退を受けた短期決選であり、自分を有権者にどうアピールするかで苦戦を強いられてきた。
一方、ホワイトハウス返り咲きを狙うトランプ氏は、経済運営では同氏の方をハリス氏よりも信頼するとする世論調査を追い風にしたい考えだ。トランプ氏は不法移民の取り締まり強化や移民の大量強制送還、減税を約束している。
トランプ氏はまた、自分の政敵を「内なる敵」と表現。7月にペンシルベニア州で行った集会で、右耳の上部を銃弾がかすめた暗殺未遂事件に遭った後、同氏のビジョンは脅威の意識でさらに暗くなったようだ。

トランプ氏が勝利すれば異例の政治的カムバックとなる。同氏は2021年にホワイトハウスを去ったものの、選挙敗北を覆そうと暴徒が連邦議会議事堂を襲撃した数週間後のことだった。1月6日に起きたこの事件を境にトランプ氏を見限った共和党員もいたが、それでも同氏は党の支持を取り戻した。同氏は2016年の選挙前にポルノ女優に支払った口止め料の処理に関連し、今年34の重罪で有罪判決を受けた。

トランプ氏は20年大統領選でバイデン氏が勝利したことを認めるのをまだ拒んでおり、投開票後の争いが長期化する可能性や勝者確定がいつになるのかについて、懸念が高まっている。
トランプ氏はさらに、開票作業さえ始まっていない段階で、民主党が不正を働いていると主張している。
ハリス、トランプ両陣営とも投票者の不法行為の主張などを巡って提訴する準備を進めており、各州で選挙人が投票を行う12月17日まで最終的な勝者が確定しない可能性も考えられる。
原題:Harris Makes Final Pitch as Trump Plays Down Fears of Violence(抜粋)
(投票日の様子や両者の言動などを加えます)
--取材協力:Gregory Korte.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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