(ブルームバーグ):フォルクスワーゲン(VW)はドイツ国内で少なくとも3つの工場を閉鎖し、数千人の削減を計画していると、同社の労働組合トップが明らかにした。広範なコスト削減で競争力を強化する戦略の一環だという。
計画には主力ブランド「フォルクスワーゲン」部門の全従業員を対象にした一律10%の減給や、ドイツの残る生産拠点を全て縮小する方針も含まれていると、VW監査役会のメンバーも務める労働評議会のダニエラ・カバロ代表が説明。減給の対象は約14万人に及ぶ可能性があるという。計画は同社が陥った危機の深刻さを物語る。
ドイツ国内の工場をこれまで閉鎖したことがないVWだが、9月には30年来の雇用保障協定を破棄。それ以来、労使交渉が続いているが、会社側が模索する人員削減の規模はこれまで明らかにされていなかった。カバロ氏は労働者の抵抗を奮い立たせようと、会社側の提案を公表した。
28日にはVW本社のあるウォルフスブルクで約2万5000人の従業員が抗議集会に参加。これらの従業員を前にカバロ氏は、会社側提案の「意味するところは、これまでに既に実行されたよりもはるかに多くの製品や数量、シフト、生産ライン全体がなくなるということだ」と声を張り上げ、「これは窮乏で、小出しにされた弱体化だ」と続けた。
VWのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は、欧州での需要減退や中国の比亜迪(BYD)との競争激化に苦しんでいるVWブランドについて、コスト高を指摘している。一方、組合側は電気自動車(EV)シフトの失敗や価格設定の誤りなど、経営ミスのつけを労働者が払わされていると主張している。
VWが30日に発表を予定する7-9月(第3四半期)の決算は、減収減益となる見通しだ。
カバロ氏は、VWのコスト削減策によりドイツで「数万人」の雇用が脅かされる恐れもあると指摘。VWグループの高級車ブランド、ポルシェはニーダーザクセン州のオスナブリュック工場と生産関係およびモデル立案を打ち切ったとも、同氏は明らかにした。
同氏によると、VWは来年と2026年の賃金を凍結し、勤続25年と35年にそれぞれ支払われる一時金の撤廃も計画しているという。
VWは減給の正確な性質についてコメントを控え、状況は「深刻」で、労使双方が会社の将来を守る責任を負うと述べるにとどめた。
フォルクスワーゲンブランドの最高経営責任者(CEO)を務めるトーマス・シェーファー氏は「ドイツ拠点では十分な生産性を上げることができていない」と指摘。同国工場のコストは会社の計画を25-50%上回っていると付け加えた。
ショルツ首相の報道官を務めるウォルフガング・ビュフナー氏は28日にベルリンで開かれた定例記者会見で、「VWが難しい状況にあることは知られている」と述べ、「経営判断の誤りで従業員が犠牲にされるようなことがあってはならない」と続けた。
原題:VW Seeks Unprecedented Plant Closings as Auto Crisis Deepens(抜粋)
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