サウジアラビアは来週、「フューチャー・インベストメント・イニシアティブ(FII)」を開催し、金融とテクノロジーの分野における大物を首都リヤドに迎える。世界のハブへと変貌を遂げるサウジアラビアの野心が、地域紛争が拡大する中で試されることになる。

国際的な企業の経営陣は、イスラエルとイランの軍事衝突の脅威がここ数十年で最高レベルに達している時期に地政学的な緊張に揺れる地域を訪れることになる。また、サウジはその広大な石油資源にも限界があるという事実に直面している。

しかし、「砂漠のダボス会議」とも呼ばれるFIIに集まる人々は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する1兆ドル(約154兆円)規模の経済改革「ビジョン2030」に参画するチャンスを逃すまいと、意欲を燃やしているもようだ。

ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン氏、シティグループのジェーン・フレーザー氏、ブラックロックのラリー・フィンク氏はFIIの常連で、今年も参加する予定。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子

サウジアラビアがテクノロジーと人工知能(AI)に重点を置いていることを反映し、テック業界の著名人も参加する。アルファベットのルース・ポラット社長とTikTok(ティックトック)の周受資最高経営責任者(CEO)は、FIIで初めて講演を行う予定。ベンチャーキャピタル大手のアンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者でテクノロジー起業家のベンジャミン・ホロウィッツ氏も登場する。

世界の他の地域、特に中国で流動性が逼迫(ひっぱく)する中、ウォール街とシリコンバレーはますます、石油資源に恵まれた中東に目を向けるようになっている。しかし、ムハンマド皇太子はその資金を海外に投資するのをやめ、国内への投資で自身の野望を支援することを望んでいる。

サウジアラビアの外交政策は、地域の安定が外国からの投資と技術的ノウハウをもたらすことを期待して、最近では地域の緊張緩和に重点を置いている。しかし、この1年間の出来事はこの地域がいかに不安定になり得るかを思い知らせた。

テキサスA&M大学のグレゴリー・ゲーズ教授(国際関係論)は「地域的な不安定が外国からの投資の見通しに与える影響は完全にマイナス」であり、「たとえその国が紛争に直接参加していなくても、紛争地域には資本は集まらない」と指摘した。

サウジでは依然として大規模な開発計画が推進されている。FIIインスティチュートのCEOであるリチャード・アティアス氏によると、今後1週間のうちに、世界中の企業幹部によって280億ドル以上の契約が発表される見込みだ。

しかし、中東地域における紛争は、間違いなく世界中の投資家の心理に影響を与え、サウジアラビアもその影響を受けている。

コープリー・ファンド・リサーチの調べによると、サウジアラビアへのエクスポージャーを持つ新興市場のアクティブ運用ファンドの数は、今年のある時期まで急増していたものの、イスラエルとイランの緊張が高まったことで伸び悩んでいる。

同時に、ムハンマド皇太子が会長を務める政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は、外国企業にとって資金を引き出すのがより困難な場所になりつつある。国内プロジェクトへの注目が高まる中でPIFが海外で使う資金が減少することが懸念されている。

とはいえ、FIIの主催者は依然として自信を持っており、今年のイベントには約7000人が参加登録している。これは現在の紛争が始まってから数日後に開催された昨年の会議の参加者数よりも多い。

FIIインスティチュートのアティアス氏は、「世界で何が起ころうとも、投資家はやって来る。ショーは続けなければならない」と述べた。

原題:Wall Street and Tech Royalty Fly to Saudi Amid Mideast War (1)(抜粋)

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