(ブルームバーグ):投資家が米利下げペース鈍化の可能性について思案する中、22日は至る所で債券が売られている。米政策見通しの見直しは世界中で債券のポジショニングを覆すリスクがある。
米国債は21日の大幅安の流れを引き継ぎ、10年債利回りは一時2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し7月以降で初めて4.2%を上回った。ドイツ10年債利回りは4bp上昇し9月上旬以来の高水準を付けた。アジアでは10年物オーストラリア国債利回りが一時16bp上昇した。
世界的な債券売りの背景には、米金融政策も通しを市場が再考していることがある。米経済の堅調さや金融緩和ペースについての当局者の慎重な発言で、トレーダーは積極的な米利下げへの期待を後退させた。原油価格上昇と11月の選挙後の米財政赤字拡大見通しも市場の懸念をさらにあおっている。
ニューバーガー・バーマンのシニアポートフォリオマネジャー、ロバート・ディシュナー氏(ロンドン在勤)は「米国の選挙まで2週間を切った今、財政見通しとそこから生じ得るインフレ上昇圧力に対する懸念はより深刻化している」と述べた。

米国債10年物の利回りは21日に10bp上昇した。この動きにより、2022年後半以降逆転していた米国債のイールドカーブの主要な部分がスティープ化し、3カ月物と10年物の利回り格差はほぼ2年ぶりの小ささとなった。
ヤルデニ・リサーチ創業者のエド・ヤルデニ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「米10年債利回りは恐らく来年早々には4.5%になるだろう」と語った。
先物価格によると、トレーダーは2025年9月までのFRBの利下げ幅予想を先週末に比べて10bp以上縮小させた。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が3.50-3.75%となると想定していることになる。
アポロ・マネジメントなどは、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で金利が据え置かれる可能性があるとみている。また、ティー・ロウ・プライスなどは、成長改善で利下げ幅が小さくなる可能性を考慮し、米10年債利回り来年5%に上昇することを見込んでいる。
金利軌道のリプライシングは他の場所でも起こっている。スワップ金利は、オーストラリア準備銀行が来年8月末までに政策金利を50bp程度引き下げることを示唆しているが、これは9月の政策決定会合後に織り込まれていた利下げ幅の半分。
また、トレーダーは日本銀行の次回利上げ時期の見通しを来年6月と、先月見込んでいた同年7月以降から前倒しした。

誰もが債券の売り圧力が強まると予想しているわけではない。みずほセキュリティーズシンガポールの債券セールス担当副社長、ルシンダ・ハレムザ氏は「中東情勢緊迫化またはハリス候補の米大統領選勝利によって、より大幅な上昇となるリスクがある」と警鐘を鳴らした。
しかし当面は、米国債の供給増や選挙のヘッジ、共和党が選挙で圧勝するリスクを先取りする市場の動きなどで、債券相場の動きは通常より大きくなりそうだ。オプションに基づく米国債利回りの予想変動率を追跡するICE・BofA・MOVE指数によれば、米国債のボラティリティーは今年の最高水準に達している。
ブラックロック・インベストメント・インスティチュートは、短期の米国債をアンダーウエートとしている1社。
ウェイ・リ氏ら同社のストラテジストはリポートで「FRBが市場が予想するほど大幅な利下げを行うとは考えていない」とし、労働人口の高齢化、持続する財政赤字、地政学的な分裂などの構造的変化の影響にで「中期的にはインフレ率と政策金利は高止まりする」と予想した。
原題:Bonds Slump Globally as Traders Rethink Fed’s Rate Cut Path(抜粋)
(第4、5段落を追加します)
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