電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は10日、待望のロボタクシー(無人タクシー)「サイバーキャブ」のプロトタイプを発表した。だが、詳細にはほとんど踏み込まず、投資家の間ではテスラが野心的な目標をどう達成するのか懐疑的な見方が広がった。

マスク氏はロサンゼルス近郊の映画スタジオの敷地内で開催されたイベントで、2ドアセダンの試作車を発表。一度に20人を運べるとマスク氏が語る「ロボバン」のコンセプトと、改良された人型ロボット「オプティマス」も披露した。ロボタクシーの価格は3万ドル(約450万円)以下になる可能性があり、「おそらく」2026年に生産が開始される見通しという。

テスラが先進運転支援機能の販売から完全な自動運転車へとどのように飛躍するのかについては触れられなかった。 マスク氏のプレゼンテーションは技術的な詳細に欠け、サイバーキャブの自社所有・運営を行うかどうか、規制といったトピックについても言及しなかった。

ジェフリーズのアナリストが指摘したように、テスラのロボットタクシーは「実効性に乏しい」印象を与えた。

マスク氏が「サイバーキャブ」を披露

発表会の内容が精彩を欠いたことで、11日午前終盤の取引でテスラ株価は約8%下落。発表会への期待から、株価は4月中旬以降に70%近く急騰していた。

テスラはこれまでに、さまざまな新製品についてあらかじめ提示したスケジュールを大幅に超過した前例があり、自動運転車については特に苦戦している。2019年にマスク氏は投資家に、翌年までに100万台以上のロボタクシーを路上に走らせると語ったが、自律走行車はまだ1台も配備されていない。

テスラの投資家としてイベントに参加したラファー・テングラー・インベストメンツの最高経営責任者(CEO)、ナンシー・テングラー氏は「サイバーキャブについての具体的な内容は、価格が3万ドルということだけだった」と述べた。「コンセプトはどれも壮大だった。アイデアはもちろん最高にクールだった」と語った。

テスラは長年、「フル・セルフ・ドライビング(FSD)」として一連の運転支援機能を販売しているが、これは常時監視が必要であり、車両を自律走行させるものではない。

マスク氏は10日、テキサス州とカリフォルニア州のモデル3とモデルYの所有者は来年になればシステムを監視する必要がなくなるだろうと語った。

ロボタクシーのイベントはマスク氏がプロトタイプの変更を命じたため2カ月遅れると、ブルームバーグが7月に報じていた。発表されたサイバーキャブは2人乗りで、ちょうの羽のように上方向に開くバタフライドアが特徴。ハンドルやペダルはない。

マスク氏は、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの映画スタジオの敷地に集まった観衆に、消費者もサイバーキャブを購入できると語った。発売時期についての質問には歯切れの悪い答えを返した。

「恐らく2026年には」と述べたが、時間軸について自分は少し楽観的になりがちだと注釈を付け「27年より前、という言い方になるだろうか」と語った。

アナリストらはこのイベントで、テスラが来年前半に発売予定のより手頃な価格帯のモデルについての追加情報が得られることを期待していた。

マスク氏はそうした情報を提供せず、同社の自動車販売見通しにさらに疑問符が付いた。

CFRAリサーチのアナリスト、ギャレット・ネルソン氏はリポートで「テスラの短期的な製品ロードマップに関する詳細の欠如に失望した。イベントは、テスラの不透明な中期的な収益見通しを変えるものではなかった」指摘した。

原題:Tesla’s Self-Driving Taxi Prototypes Greeted With Skepticism (2)(抜粋)

(発表会を受けた市場の追加して更新します)

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