(ブルームバーグ):財務省は11日、野村ホールディングス(HD)傘下の野村証券が持つ国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)に関する全ての資格を一時停止すると発表した。
発表によると、長期国債先物で相場操縦の事実が認められたことを踏まえたもので、停止期間は15日から1カ月間。特別資格には買い入れ入札への参加や国債市場特別参加者会合への参加などがある。
野村証を巡っては、国債の先物取引で金融商品取引法(相場操縦)違反行為があったとして、証券取引等監視委員会が先月、課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告した。野村証が同庁に対して法令違反の事実を認めたことが、このほど明らかになっていた。
財務省担当者は同日夕、停止期間について、野村証が内部管理体制を見直し、再発防止策などを検討するのに必要な時間と説明した。同証にとってプライマリーディーラーとしてのメリットはなくなるが、応札・落札義務は継続するため、現時点で市場に大きな影響を与えるとは考えていないとも指摘した。

野村HDは財務省の発表を受け、「このような事態が起きたことを厳粛に受け止め、お客さまはじめ関係者に多大なるご迷惑とご心配をかけ心よりおわび申し上げます」とのコメントを発表。連結業績に与える影響については、必要が生じた場合は速やかに開示するとした。
課徴金納付勧告の公表以降、野村証はトヨタファイナンスをはじめ複数の企業の社債引き受け主幹事から除外されるなど業務への影響が出ている。財務省によると、国債入札で主要な落札の担い手である野村証は、2024年度上期(4-9月)の国債落札総額ランキングで4位だった。
野村HDの株価は11日午前、ほぼ小幅高で推移していたが、ブルームバーグによるプライマリーディーラー資格の一時停止報道を受け、午後の取引で前日比マイナスに転じた。終値は同0.4%安の790円。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、「野村の国債でのプレゼンスは大きく、1社抜けることで他社のウエートが高まる」と指摘。特に「超長期債は発行過多になっているイメージがあり、流動性が低下する懸念もある」と話した。
ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は「金利は上昇局面にあり、需要が強いため市場に混乱をもたらすまでには至らない」との見方を示した。
日本証券業協会の広報担当者は、金融庁から課徴金納付命令が今後出された場合、野村証から報告を受け、協会としての対応は「内容を厳正に審査し検討する」と電子メールでコメントした。
国債の相場操縦を巡っては、19年にシティグループ証券、18年には三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、それぞれプライマリーディーラー資格の1カ月間停止措置を受けている。
(財務省担当者のコメントを追加して更新します)
--取材協力:日向貴彦、佐野七緒.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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