フランス政府は、606億ユーロ(約9兆8500億円)の収支改善策を盛り込んだ2025年度予算案を公表した。バルニエ首相は、絶対多数政党不在の国民議会(下院)で敵対勢力が反発するリスクを冒し、投資家の信頼回復を目指す。

「前例のない財政改善努力」(アルマン経済・財務相)は3分の2余りが歳出削減、残りは企業と富裕層、エネルギーへの増税で賄われる。

新たな財政計画では、年間収入10億ユーロ超の高収益企業約440社を対象に一時的増税を実施し、来年80億ユーロ、26年には40億ユーロの税収増を見込む。海運会社への臨時増税は、来年5億ユーロ、26年は3億ユーロの税収増につながる。

フランスの今年の財政赤字は国内総生産(GDP)比6.1%と予想されているが、25年は5%への縮小を目指し、対策を講じなければ7%に拡大すると政府は警告している。GDP比3%以内という欧州連合(EU)の財政基準を順守する目標は29年になるまで2年先送りした。イタリアの財政赤字は26年に基準内に収まる見通しだ。

Michel Barnier

コメルツ銀行の金利ストラテジスト、 ハウケ・ ジームスン氏は予算案発表前の段階で、「今回の財政赤字削減を市場が特に大きな成果と見なすとは考えない」と見解を示した。

シティグループのジェイミー・サール氏らストラテジストは、新たな財政赤字目標が「楽観的過ぎる」とした上で、既に価格に織り込まれていると思われるが、格付けリスクを高めるとリポートで分析した。

S&Pグローバル・レーティング、フィッチ・レーティングスより格付けが1段階高いムーディーズ・レーティングスが2週間以内に動くリスクが恐らく最も高いが、「シングルA」格付けに道を開き、格付けに敏感な投資家の資金流出を促す恐れがあるという意味で、フィッチの変更に伴うマイナスの影響が潜在的に最も大きいという。

絶対多数政党不在のハングパーラメントが生じた政治的混乱と、特に税収の落ち込みに伴う財政赤字の著しい悪化が重なり、フランスに対する投資家の信頼は揺らいでいる。フランス10年国債のドイツ国債に対する上乗せ利回り(プレミアム)は、国民議会選前は50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)未満から、80bp近くに拡大した。

シティのストラテジストらはフランス10年国債のプレミアについて、「今後数週間は80bpより拡大するとみておらず、格付けや格付け見通しの変更がなければ、むしろ幾分引き締まることもあり得るが、25年は100bpに向け拡大する」と予測を明らかにした。

原題:France Hits Big Firms, Wealthy to Trim ‘Colossal’ Debt Pile (1)、France’s ‘Too Optimistic’ Debt Target May Spur Bond Moves: Citi(抜粋)

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