ガザ戦闘1年 数字が語る現実

小川キャスター:
2つの異なる世界が見える。そしてその狭間の恐ろしさを感じるような中継でしたけれども、ここからは須賀川さんにも加わってもらいます。

23ジャーナリスト・須賀川拓さん:
まず今のVTRと増尾記者の中継でもありましたけれども、1年経ちました。数字でファクトを積んでいきたいと思います。

まず死者です。ガザ側は4万1870人、一方でイスラエル側は1485人となっています。やはり歴史をさかのぼると、いつまででも遡れてしまうことができるんですけど、今回は2023年10月7日に起きたことから事実を積み重ねていきたいというふうに思います。

イスラエル側の死者ですけれども、私はガザ境界にあるイスラエル側の村キブツ・ベエリというところを取材しました。ここでは生後10か月のミラ・コーヘンちゃんが頭を撃たれて殺害されています。別の村では、2歳と6歳の子供が一家全員とともに殺害されています。5歳と8歳の兄弟は車の中で両親とともに銃撃されて殺害されました。

イスラエル側で殺害された人々は約1200人いますが、そのうちの子供たち36人にはもちろん名前があり、愛する家族がいました。

ガザ側にいきたいと思います。ガザ側で殺害されたのは4万1800人近く、このうち子供たちは1万1300人を超えます。アビドラヒーム、アビドラフマン、アビドラミール、こういった名前たくさんありますけれども、今挙げた3人は0歳でした。

イスラエルの攻撃で殺害され、2歳の誕生日を迎えることができなかった子供たちは2100人にのぼります。

国境なき医師団のパレスチナ人医師の言葉をここで一つご紹介します。
「私は子供たちの腕や足に名前を書きました。こんなことを思いついたのは隣の家が空爆され、遺体の一部が中庭や屋根に引っかかっているのを見たから」
こういった言葉を彼女は同僚に残しているんです。

続いて負傷者です。ガザでは9万7000人以上、イスラエルでは8730人がけがをしています。そして、イスラエル側の人質101人は今も解放されていません。

避難者です。避難者数はガザは約190万人。対してハマスによる脅威で避難したイスラエル側の避難者というのは南部に限っても10万人です。先ほど増尾記者が中継した場所です。ですがその多くは既に自宅に戻り始めています。そしてガザでは、今49万5000人が食料不足に直面している状態なんです。

藤森祥平キャスター:
今、須賀川さんから数字を伝えてもらいましたが、ガザの被害状況を東大の渡邉英徳 教授がこのようにまとめています。赤と黄色のポイントは攻撃を受けて損壊したりその可能性がある場所。よく見るとほぼガザ地区全土に及んでいます。ですから人口の9割が避難民になるというのは、これがその根拠になってるわけです。

そしてガザでは学校や病院も大きな被害を受けています。学校は564校のうち493校、ほぼ9割が戦闘の被害を受けています。病院は36か所のうち31か所が攻撃を受けており、稼働できません。これが現実的な数字なんですね。

23ジャーナリスト・須賀川さん:
そうですね。私は本当に当初しか現場に入っていなかったので、1年経ったこのタイミングではこの状態をあえて評価せずに、この数字を見て、このファクトを視聴者の皆さんに受け止めていただいて、その評価を委ねたいというふうに思っています。

小川キャスター:
星さん、戦闘から1年となるわけですけども。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
この戦争を止められるのは実際はアメリカしかないんです。ところがアメリカの力が相対的に落ちてきて、一方で2024年はさらに11月に大統領選挙がありますからイスラエルの影響力とアメリカの国内での影響力を考えると、今のバイデン政権も動きが取れないという状況にあります。そこをイスラエルが狙ってもいて、どんどん戦火を拡大しているんです。

やはりアメリカに任せられないという状況の中で、日本を含めたG7とか国連とか、そういう力で少しでもその停戦の動きをこれから築いていくしかないという状況に至ってると思います。

小川キャスター:
須賀川さん、どうこの戦闘を終えたらいいのか。

23ジャーナリスト・須賀川さん:
今、星もおっしゃいましたけれども、イスラエルにとってみればやはり完全勝利しないと負けに等しいわけです。一方でハマス側にとってみれば1人でも生き残っていれば、そのイデオロギーが生き残っていれば、どれだけ負けようと彼らにとってはそれが勝利なんです。この戦争は本当に0対100。当事者だけでは白黒つけるまで続いてしまう。なので星さんがおっしゃったみたいに、だからこそアメリカ、そして日本、私達国際社会が介入して少しでも早くこの戦争を終わらせないと、この市民の命っていうのは失われ続けていくと感じています。

小川キャスター:
そのためには1人1人が心を寄せ続けるということですね。

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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

須賀川 拓
23ジャーナリスト 前JNN中東支局長
「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞
アフガニスタンやパレスチナイスラエルなど紛争地域を取材