(ブルームバーグ):中国は対外収支の不均衡拡大を曖昧にしている国際収支データの矛盾を説明すべきだと、米国の有力エコノミストが指摘した。
米財務省や米通商代表部(USTR)で働いた経歴のある米外交問題評議会(CFR)シニアフェローのブラッド・セッツァー氏によれば、中国国家外為管理局(SAFE)が作成した国際収支データで示されたモノの貿易黒字は2022年以降、税関が報告する黒字を大幅に下回っている。
上海で開催された外灘金融サミットに参加した同氏は5日、「これらの巨大なギャップは、中国がデータに対して行っている調整の一部に疑問を投げかけるものだ」と述べた。
中国が国内経済の成長を促すため輸出に不当な補助金を出していると批判する各国は、中国の貿易黒字を正確に測ろうとしており、こうしたデータの食い違いが問題視されている。米財務省は6月、このギャップについて中国政府に説明を求めた。
中国の貿易黒字データ、不可解な食い違い-米国が説明求める

セッツァー氏によると、金利が上昇しているにもかかわらず、中国の投資収支で赤字が拡大していることも不可解だという。同氏は最近のリポートで、中国は何兆ドルもの国外資産からの収入を過少に算出しているように見えると主張した。
これらを総合すると、中国の対外黒字は7000億ドル(約99兆6000億円)に近く、昨年報告された経常黒字2530億ドルの倍以上になるとセッツァー氏は試算している。

SAFEは、グローバル企業が特殊な自由貿易区の中国企業に生産を委託する「ファブレス製造」の台頭が差異の原因だとしている。
国際通貨基金(IMF)によれば、SAFEは中国企業と外国企業との間の取引を対象としているのに対し、税関の統計は物品の越境移動に基づいている。
IMFは8月の報告書で、当局から提供された情報に基づくと乖離(かいり)はこれでおおむね説明され得るとコメントした。
セッツァー氏は、データがなぜ乖離したかを明らかにするため、SAFEは行った統計調整の詳細を数値例を用いて開示すべきだと述べた上で、対外直接投資や債券、銀行融資の国際収支上の所得について、より詳細な内訳を示する必要があるとの考えを示した。
原題:China Should Explain ‘Enormous’ Data Gaps, US Ex-Official Says(抜粋)
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