23日の日本市場は円相場が対ドルで上昇。日本銀行の植田和男総裁が金融緩和を調整する姿勢を維持、円が買われて債券相場は下落(長期金利は上昇)した。

国会で答弁する植田総裁

植田総裁の国会答弁を受けて円高が進んだ。経済・物価見通しの確度が高まれば金融緩和の度合いを調整する基本的な姿勢に変わりはないとの発言を受けて、日米金利差縮小を見込んだ買いが先行した。先立って発表された7月の全国消費者物価指数(コアCPI)は3カ月連続でプラス幅が拡大、日銀目標の2%を28カ月連続で上回った。長期金利は上昇、株価は続伸した。

CPI、植田総裁答弁に続いてパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の基調演説が午後11時に控えている。利下げの時期や規模、ペースについてシグナルを発するか市場は注視しており、手控え要因になった。22日の米市場ではパウエル議長が年内の積極的利下げを示唆することはないとの見方から株が下落し、金利が上昇していた。

インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは植田総裁の答弁について、基本的には7月日銀会合後の会見時のトーンが維持されたと評価した。「マーケットとしてはややタカ派的に受け止めた」としている。

為替

東京外国為替市場で円相場は1ドル=145円台に上昇。植田総裁が国会閉会中審査で発言する中で徐々に水準を切り上げた。

りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、データ次第で利上げを継続するとの方針を植田総裁が示したほか、パウエル議長の発言を控えてややドル安が進んだ面もあると指摘した。

植田総裁は衆議院財務金融委員会での閉会中審査で、内外市場は引き続き不安定なため、高い緊張感を持って注視すると発言。一方で経済・物価見通し実現なら金融緩和を調整する基本姿勢は変わらないと述べた。

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは「内田副総裁の発言を踏まえつつ、金融正常化を進める姿勢が変わっていないことを示し、日銀がハト派に戻ったということはないことが確認できた」と指摘。円相場の上昇をサポートしていると述べた。

 

債券

債券相場は下落。植田総裁による国会閉会中審査での発言への警戒感が相場の重しになっている。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、植田総裁の姿勢は基本的に7月決定会合から変わっていない印象だと指摘。全体的に様子見の雰囲気が強く売買は低調だが、「ハト派的ではないという意味で、10年ゾーンを中心に売られている」と述べた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、植田総裁はタカ派とハト派方向のどちらにも配慮したバランスを取った言いぶりだったと話した。

新発国債利回り(午後3時時点)

 

株式

東京株式相場は続伸。植田総裁の答弁を見極めようとする市場参加者の姿勢から一時下落する場面もあったが、午後に日中高値を付けた。

ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジスは、植田総裁発言を無難に通過し、買い安心感が広がっていると述べた。一方でパウエル議長講演を控え、本腰を入れた買いではないと思うと話した。

TOPIX上昇に最も寄与したのは銀行株指数で、個別ではHOYAだった。指数構成銘柄2132のうち1192が上昇、829が下落、111が横ばいだった。

SBI証券の鈴木英之投資情報部長は植田総裁の答弁について、マーケットを前回揺り動かしたようなすごくタカ派的な印象は後退したと指摘した。ジャクソンホールで想定通りに米国の利下げの方向が確認できれば相場も落ち着くだろうとしている。

 

--取材協力:酒井大輔、我妻綾.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.