(ブルームバーグ):米イリノイ州シカゴで4日間の日程で開かれていた民主党全国大会は、ハリス副大統領が最終日の22日夜に演説し、同党大統領候補指名の受諾を正式に表明した。ハリス氏は中間層のための闘いに優先的に取り組むことなどを約束した。
バイデン大統領の選挙戦撤退を受けて活気を取り戻した民主党は、大会を通じて浮動票の取り込みに努めた。ハリス氏は演説でそうした勢いに乗じるとともに、共和党の攻撃に正面から対抗した。米主要政党初の女性かつ黒人、アジア系大統領候補としてホワイトハウスを目指す。
ハリス氏は「この数週間に私をここに導いた道筋は間違いなく予想外だった」としつつも、「私はありそうもない旅路には不慣れではない」と述べ、自身の生い立ちを語って、自分が経済や移民、犯罪といった問題に対処するのに最も適任だと訴えた。
ハリス氏の経済政策、エコノミストらはどう見ているか-QuickTake
生殖に関する権利を守ることや経済的・政治的機会を拡大する計画についても率直に話した。
共和党大統領候補のトランプ前大統領のことは、有権者ではなく自分自身を優先する人物だとして批判した。
また、「今回の選挙で、わが国は過去の苦渋や不信、分断を招く争いを乗り越える一瞬の貴重な機会を得た。特定の政党や派閥のメンバーとしてではなく、米国人として新たな道を切り開く機会だ」と呼び掛けた。
試練
バイデン氏(81)に代わり、急きょ大統領候補指名を受けたハリス氏は、民主党内に高まったエネルギーと興奮を生かして選挙に勝利することが最重要課題となる。
多くの有権者の間でまだ人物像が定まらず、11月5日の大統領選まで3カ月足らずのハリス氏にとって、それはまさに政治的生き残りを賭けた試練と言える。
ハリス氏(59)は「私は全ての米国民のための大統領になると約束する。党や自分自身よりも国を優先し、法の支配や自由で公正な選挙、平和的な政権交代など、米国の神聖な諸原則を堅持すると、常に信じてもらうことができる」と訴えた。
また、当選すれば「最高の志でわれわれの団結をもたらし、リードし、耳を傾け、現実的で実践的かつ常識のある大統領になる。そして常に米国民のために闘う」と話した。
これまで熱狂的な民主党支持者と不満を抱く中道派のいずれにも興奮をもたらしてきたハリス氏だが、バイデン氏やトランプ氏(78)よりも若いという点だけでなく、両氏に比べて一段と有能なリーダーであることを有権者に認識してもらう必要がある。
ハリス氏は演説で「多くの点でドナルド・トランプ氏は不真面目な人物だ。だが、トランプ氏がホワイトハウス返り咲きを果たした場合、その結果は極めて深刻だ。ガードレール(制御)なしのトランプ氏を想像してみてほしい」と述べた。
記録的資金集め
ハリス氏は激動の夏を綱渡りで駆け抜けた。まずバイデン氏の当選の可能性に疑問が沸き起こった気まずい数週間を、公に忠誠を表明して乗り切った。バイデン氏が再選に向けた選挙戦から撤退すると、ハリス氏は選挙資金集めで記録を打ち立て、ソーシャルメディアの熱狂を利用し、主要な利害関係者を味方につけた。
22日の演説は、選挙戦のより困難な段階への移行を示すものでもある。ハリス氏は最近の勢いが、バイデン氏撤退への安堵(あんど)感によるつかの間の蜜月以上のものであることを証明する必要に迫られるからだ。また、ハリス氏が重要な演説を利用して無党派層や浮動票を取り込めるかどうかも試される。
多くの世論調査では、ハリス氏はトランプ前大統領に対し優位に立っており、トランプ氏に対してはバイデン氏の撤退前の状況を上回っている。今大会では、一般の党員や党の有力者らが、ハリス氏の選挙戦を取り巻くエネルギーをオバマ元大統領の選挙戦当時に例えている。
ハリス氏の指名受諾演説は、バイデン大統領の演説で始まり、オバマ元大統領夫妻がスピーチで放った痛烈なトランプ氏批判で盛り上がった4日間のイベントの締めくくりとなった。
原題:Harris Accepts Historic Nomination Vowing Fight for Middle Class、Harris Accepts Historic Nomination to Start Election Sprint (1)、Harris to Ask Voters to ‘Move Past the Bitterness’ in DNC Speech、Harris Defies Doubters on Road to Presidential Nomination(抜粋)
(ハリス氏の演説内容を追加して更新します)
--取材協力:Nancy Cook、Ted Mann.
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