(ブルームバーグ):多角的な金融サービスを提供するB.ライリー・ファイナンシャルの株価が12日の米株市場で約52%急落した。投資家に財務の健全性を正確に伝えていたかどうかを巡り、米当局の調査が拡大していると伝えられ、新たな評価損計上の可能性を明らかにしたことも嫌気された。
事情に詳しい複数の関係者によれば、米証券取引委員会(SEC)は、同社が一部の資産に組み込むリスクを適切に開示していたかどうか調査している。創業者のブライアント・ライリー氏と長年のビジネス・パートナーであるブライアン・カーン氏との交流についても情報を求めているという。カーン氏は米フランチャイズ小売り事業会社フランチャイズ・グループ(FRG)の最高経営責任者(CEO)をかつて務め、FRGはB.ライリーの比較的大きな投資先の一つだった。

調査の非公開を理由に関係者らが匿名で語ったところでは、他のインサイダーによる不適切取引の可能性に関する調査も行われている。資金繰りに窮し返済が疑わしい個人顧客向け債権の会社間の移動にも、当局は注目している。
ロサンゼルスとワシントン、フィラデルフィアのスタッフが関与するSECの民事調査は、ニュージャージー州の連邦刑事捜査と並行して進められている。カーン氏が資産の大部分を管理していたヘッジファンド運営会社プロフェシー・アセット・マネジメントの2020年の破綻について、検察は調べている。
資金を失ったプロフェシーの投資家らは、カーン氏がFRGの経営権を取得するため、プロフェシーの資金を不正に流用したのではないかと主張し、訴訟で争っている。 このファンドの共同設立者が昨年11月に2億9400万ドル(約434億円)の詐欺事件で有罪を認め、検察に協力しているとブルームバーグ・ニュースが先に伝えていた。

野村ホールディングスがB.ライリーのためにアレンジした6億ドルの融資が、FRGの買収資金の一部に充てられた。ブルームバーグが先に報道したところでは、野村は他の貸し手を上回る2億4000万ドルにコミットしている。
B.ライリーは約15億ドル相当のさまざまな資産を野村への担保にしており、FRGの株式約2億2000万ドル相当と、やはりFRGの株式を裏付けとするカーン氏向けのローン債権2億ドルが含まれるという。
ブルームバーグが1月時点で伝えたところでは、社外アドバイザーチームは、担保が詐欺に関係している恐れがあると野村に注意喚起し、B.ライリー向け融資の評価を引き下げるよう促したが、野村の担当者はその時点では対応に動かないと判断したという。
米SEC、ヘッジファンド破綻に関係するB.ライリーの取引調査
野村は12日、3月末時点で約4億7400万ドルの資金が提供された協調融資のクレジットファシリティー(与信枠)に自社が占める割合は、25%未満だと電子メールで配布した文書で説明。「当社の融資は担保で裏付けられており、担保にはかなりの価値があり、FRG関連の資産は少ない」とコメントした。
ライリー氏は12日の投資家との電話会議で、B.ライリーとカーン氏の取引に主に関係するSECの召喚状をライリー氏と同社が7月に受け取ったことを明らかにした。
カーン氏の代理人にコメントを求めるメッセージを残したが、これまでのところ返答はない。SECとニュージャージー州連邦地検の担当者もコメントを控えた。カーン氏とライリー氏および関連企業は、現時点で刑事責任を問われておらず、当局が行動を起さず調査ないし捜査が終了することもあり得る。
B. ライリーは12日、FRGの持ち分の一部と関連するローンの評価損計上に伴う配当停止と、損失の可能性を公表した。同社の発表によると、現金支出を伴わない評価損は約3億3000万ドルから3億7000万ドルになる見通し。4-6月(第2四半期)の損益は4億3500万-4億7500万ドルの赤字を見込む。
原題:B. Riley Faces Wider Probe on Risk Disclosures, Ties to Kahn (3)、B. Riley Struggles to Value Its Assets as SEC Steps Up Scrutiny(抜粋)
(B.ライリーの損失見通しを追加して更新します)
--取材協力:Jennifer Surane.
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