全国で相次ぐ強盗事件に関連があるとされる、山口県岩国市の強盗未遂事件。運転手役とされた男の初公判が1月31日、山口地裁でありました。弁護人への取材で、指示役とされるルフィと呼ばれる人物が複数いる可能性があることも明らかになりました。

住居侵入・強盗未遂などの罪に問われているのは、東京都港区の無職・上野晴生被告(23)です。

起訴状などによりますと去年11月、上野被告はすでに逮捕・起訴された男4人《葛岡隆憲容疑者(26)、石栗一樹容疑者(37)、北条マクサンドリ容疑者(24)、渡邉翼被告(26)》らと共謀して、岩国市の会社役員の男性の家に侵入。家にいた家族の両手首を結束バンドで縛るなどして、金品を奪おうとしましたが、家主の男性が日本刀を持ち出すなどして抵抗され、未遂に終わったとされています。葛岡容疑者、石栗容疑者、北条容疑者の3人は、東京都稲城市の強盗傷害事件にも関わった疑いで逮捕されています。

山口地裁であった初公判に上野被告は上下紺色のジャージ姿で現れました。裁判官に認否を聞かれると「間違いありません」と、はきはきとした声で答えました。

検察側は冒頭陳述で、上野被告が犯行に至ったいきさつなどを明かしました。これによると上野被告の役割は運転手役・見張り役などで、ほかの4人の男が実行役などを務めました。5人ともインターネット上に投稿された求人に応募するなどして、事件に関与するようになったということです。

上野被告は、去年10月末ごろ、引っ越し費用などを工面するためにSNSで「即金5万円」などと書かれた求人を見つけ、応募しました。仕事内容は、うそ電話詐欺などの特殊詐欺に関する「受け」(=被害者から直接現金やキャッシュカードなどを受け取る役割)、「出し」(=ATMなどで現金を引き出す役割)と紹介されました。しかし11月4日に「岡山で運びの仕事がある。報酬は30万円です」などと誘われ、引き受けました。翌5日、指示役に従い、岡山県に移動してレンタカーを借り、倉敷市の公園や岩国市の公園でほかの男らと合流しました。6日に岩国市で強盗しようとしますが、窓ガラスをバールでたたいても割れず断念。その同じ日に、指示役に従って岡山県総社市内で警察官になりすまし、高齢者からキャッシュカード3枚をすり替えて盗み、ATMで120万円を引き出す特殊詐欺にも加担しました。そして7日、再び岩国市で強盗することとなりましたが、家の中で家主の男性に日本刀で抵抗されて逃げ帰り、未遂に終わりました。

葛岡容疑者、石栗容疑者、北条容疑者と現場から逃げて3人を車からおろした後、高速道で物損事故を起こし、警察に職務質問されて犯行を自供し、逮捕されたということです。

この指示役は「ルフィ」と呼ばれ、一連の強盗事件の指示役の名前と一致しています。公判後弁護人によると上野被告は、ルフィからテレグラム(=秘匿性の高い通信アプリ)で逐一指示があり、イヤホンを付けて聞きながら動いたり、メッセージを受けて動いたりしていました。岡山県での事件もルフィからの指示だったということです。ただ、西日本に行くまでは強盗というのは聞いておらず、葛岡容疑者たちが話している内容を聞いて「誰かの家か事務所に入って金庫を奪うのだな」と察したといいます。