鉄人レースともいわれるトライアスロン大会に、義足で挑戦する一級建築士の男性がいます。足を失っても健常者も障害者も関係ないフィールドで「義足」でスポーツを楽しみたい…。そんな男性の挑戦を取材しました。

富山市岩瀬。中古の住宅を改装した事務所で働く一級建築士の吉川和博さん、41歳。

吉川和博さん:「このようにこっちが義足です」
この日、事務所に届いたのは…特注のウェットスーツ。
吉川和博さん:「結局こっち側の足がここまでしかないので、完全に全部測ってフルオーダーでやりました。だいぶ違いますよね」

あえて健常者のトライアスロンに挑戦しようというのです。その理由は…。
吉川和博さん:「自分の未来が全く想像できないっていう今の社会の現状を問題視していたので、自分はしょうがないかもしれないけど、これから同じ境遇の人、義足になったりする人はこれからもいっぱい出てくると思うんですけど、そういう人たちが自分の未来を想像できるような情報を僕が発信者になって発信していったら自分の生きがいになっていくんじゃないかと思って」
目指すは障害のあるなしにかかわらず認め合うインクルーシブな社会です。

記者:「どうでした?」
吉川和博さん:「めっちゃ浮きました。泳ぎやすい」「(トライアスロンではスイムで)やっぱり足を使わないから(ほかの人と)あんまり差が出ないからスイムは一番義足を感じない」

バイクをこぐため左足に義足を装着します。
さらに、ランニングではスポーツ用義足に変更します。
記者:「取り替えるのに時間ロスが?」
吉川和博さん:「そうですね。用途によって。逆に人間の足が全てに対応できる筋肉だからすごいよねっていう」
3種目を競うトライアスロン。
義足で長距離を走るのは足への負担が大きいようです。
この日、吉川さんは高校生に向けて講演を行いました。

吉川和博さん:「足が痛いなと思って病院にいったらなんか変な影があるねって言われて、精密検査したら骨肉腫だっていうことが発覚しました」
小学校から大学までバスケットボールに打ち込んだ吉川さん。しかし、大学2年の夏、骨のがんともいわれる骨肉腫と診断され、左足の膝から上を切断。その後、2年間、抗がん剤治療とがんの転移と戦いました。

そのとき「残りの人生」について考えたといいます。
吉川和博さん:「もう自分の人生長くないかもしれないなっていうのも、そんなんだったらいつかこれやろうじゃなくて、やりたいことは多少人に迷惑をかけてもすぐにやってやろうっていう気持ちに…」

やりたいことはすぐにやる。
初めての挑戦が14日間の世界無計画旅行でした。2023年は東京マラソン。グランフォンド富山にも挑戦。そのきっかけとなったのが…。
「義足で走る楽しさ」を伝える、「ギソクの図書館」。吉川さんは運営メンバーとして活動する中で6年前から自らもスポーツ用義足で走るようになりました。

吉川和博さん:「自分の欠点が実は自分の武器になる可能性があることも発想の一つにいれてほしいなと」
生徒「挫折せずに自分の夢を見つけて追い続けるのがすごいと思った」
生徒「新しいことをやり続けるのがすごいと思った」
吉川さんが挑む滑川トライアスロン。スプリントの部で、スイムが750メートル、バイクが20キロ、ラン5キロを走ります。

吉川和博さん:「いつもと一緒で完走なんですけど。ゴールゲートをデザインさせてもらったんですよ。フィニッシュってやつ。フィニッシャーのステッカーもやらせてもらったんで、それをもらうことが目標です」
スプリントの部には95人がエントリー。午前8時過ぎ、ついにスタートです。