落語界には階級があります。見習いからはじまり、前座として4年修行。そこからやっと「二ツ目」に上がって一人前の落語家に。富山県出身の立川志の輔さんなどのベテランは、真打ちとなります。この春、「二ツ目」に昇格した富山県内初の女性落語家を取材しました。

高岡市出身の女性落語家、三遊亭美よしさん、28歳。

(浅草)芸能・文化の発信地、東京・浅草。

「三遊亭美よしと申します、よろしくお願いします」

およそ4年半の修行期間を経て、先月、「二ツ目」として落語家デビューを果たした美よしさん。およそ1か月間毎日、都内各地の劇場でお披露目公演です。この日の舞台は浅草演芸ホール。誕生からおよそ60年、名だたる落語家たちが聴衆を楽しませてきました。

美よしさん:
「ここに自分の名前があって写真も載ってて、やっと一員になれて。でも大師匠とか師匠の名前の札見ると、木の色自体が濃くなってたり、墨がはげてたりして、このぐらいになるまで続けられたら」

橋本星奈アナウンサー:「どうして落語家に?」

美よしさん:「ちょっと寄席見にいってみようかなってふらっと。面白かったんですけど、周りの人より楽しめてない理解できてない。もう1回行ってみようって。それの繰り返しでどんどんのめり込んで」

関西の大学を卒業後、就職先で働きながらも寄席に通い続けた美よしさん。

美よしさん:「すごい面白い職業だなぁって。やってみたいなぁと思って」

癖のない軽妙な語り口にとりこになった三遊亭・遊吉さんに弟子入りしました。

三遊亭遊吉師匠:
「浅草だったと思いますけど、なんか追かけてきて。僕もとるつもりなかったんですけどね。女性の噺家さんも多くなってるんですけど、落語とか男用にできてるから」

男社会の落語界。女性だからといって特別扱いはされません。

美よしさん:
「ここでに荷物を置いてここで着替えたりしてるんですけど。もともと男性社会の業界なので、女子更衣室男子更衣室って別れてないです」

多くの人が行きかうこの通路で上手く着替えるのも、一人前の落語家の仕事といいます。

江戸時代から続く習わしが根付く古典芸能・落語。しかし美よしさんが修行で使っているのは...

美よしさん:「1年目のお年玉でこれを買って」

電子タブレットです。持ちネタおよそ25席分の演目を打ち込み、色をつけたり、ニュアンスを書き込んだり。

美よしさん:
「絵文字使っちゃってます。こんなの師匠に見せられないですけど」

たとえ古典芸能の落語家であっても、横顔はイマドキの女性です。いよいよ本番。

「三遊亭美よしでございます。私事ですが、この春二ツ目に昇進しました。(おめでとう!)」

この日選んだ演目は、「時うどん」。知恵の働く兄貴分と少し足りない弟分がうどん屋へ。うどんは1杯16文ですが2人の持ち金は合わせて15文。さぁどうやって誤魔化す?

小銭を数える合間にいまの時間を聞いてうまく切り抜けた兄貴。

さぁ話も終盤。弟分が教わったやり方をまったく同じように別のうどん屋で実践しますが。

美よしさん:
「たくさん笑ってもらえてよかった。甘めに採点して90点ぐらいです」

客:
「すごい初々しくていい。かわいくていいです」

客:
「すごくしゃきしゃきしてて、気持ちよかった。笑点に出るぐらい(頑張ってほしい)」

富山からの客:
「(富山出身の子が頑張ってる)そういま初めて(聞いた)そうか。頑張ってほしいね、期待しておりますよ」

三遊亭遊吉師匠:
「一生懸命やってると思います。どっちにしてもこれからですからね。まぁ明るいからいい。とりあえずは。それが一番だと思います」

三遊亭遊三大師匠:
「リズム感がいい。おしゃべりはリズムだから。富山の皆さんにかわいがっていただきたいと思いますね」

二ツ目となり、自由に寄席に参加できるようになったため、今後は地元富山での活動も力を入れていきたいとしています。

美よしさん:
「地元の人にも定期的に見ていただく機会があったらいいなって思いますし、美よしの落語を見たいって思ってくれる人が増えたらいいな。見てもらいたいですね」

富山なまりが出ちゃって、師匠に怒られることもあるそうです。など6月には富山での寄席も決まっているということで、これからの活躍、期待したいですね。