富山市内の病院に、誰でも自由に演奏できる「病院ピアノ」と呼ばれているピアノがあります。癒やしの音色を奏でるのは、難病「筋ジストロフィー」と闘う女性です。
富山県リハビリテーション病院こども支援センターで演奏するのは、富山市のオルガン奏者で、入院している松原葉子さんです。
ことし4月から始めた演奏は、病院スタッフとの連弾がおなじみとなっています。連弾の常連は松原さんの主治医、影近謙治院長です。
記者:
「影近先生、もともとピアノは?」
富山県リハビリテーション病院
こども支援センター 影近謙治 院長:
「まったく。松原さんに教えてもらったんです」
松原葉子さん:
「さりげなく私が和音を付けて、あたかもピアニストになったかのような感じ。一緒に楽しく」
富山県リハビリテーション病院
こども支援センター 影近謙治 院長:
「治療受けながら自分のできる能力を出してるってすばらしいことですよね。それをみなさんが知ってくれればいいですよね」
療養介護棟に入院する松原さんは、全身の筋肉が衰えていく難病「筋ジストロフィー」で5年前、呼吸不全で気管切開をし、現在は人工呼吸器を装着しています。
コロナ禍で外部との接触が厳しく制限されていて、連弾は病院スタッフ限定です。リハビリの一環として松原さんは月1回から2回程度、玄関ホールで演奏していて「病院ピアノ」と名付けています。
松原葉子さん:
「通りがかりのスタッフさんとか、ドクターと連弾させていただいたりして、それはなかなか、ないことかなと私自身も思いまして、とても尊い時間を与えられています」
松原さんとオルガンとの出会いは、幼い頃から通っていた富山鹿島町教会。礼拝を通じて教会音楽に親しみ、リードオルガン奏者になりました。
これまで全国各地で演奏活動を重ねていて、発売したCDもクラシック専門誌などで高い評価を得てきました。
この日の「病院ピアノ」には、通りかかった病院スタッフが次々と参加し、玄関ホールは一足早いクリスマス気分に包まれました。
大切にピアノを奏でる松原さんの手にはびっしりとテーピングが…。
松原葉子さん:
「指を自分で持ち上げる力がないので」「できていたことが徐々にできなくなるっていうことはたくさんたくさんあるんですけども、でも今与えられている機能の中で、私の今のすべてをここに込めるつもりで音色を出しています」
松原さんの特別な時間「病院ピアノ」は、優しい音色と笑顔でコロナ禍の病院を癒やしています。