歴史的な円安に政府・日銀は、朝イチで円買い・ドル売りの介入を行ったと見られますが、数時間で149円前後に逆戻りするなど、為替市場は依然緊張状態が続いています。この歴史的な円安の影響に頭を抱える企業もあれば、今こそチャンスと期待を膨らませている人もいます。
射水市の「大樹」も円安の影響を受けています。
大樹製造部 新田智宏さん:
「こちらは食品の袋になる原料なんですけども、こちらから弊社のほうで製袋という袋の状態に加工しております。だから袋のおおもとですね」
食品パッケージを製造している「大樹」では、それぞれの食品会社のオーダーに合わせて加工して納入していますが、パッケージの材料となるこのプラスチック製のフィルムの価格上昇が続いています。
大樹製造部 新田智宏 さん:
「これほど短期間に一次、二次、三次と値上げ要請がくるということは、今までは経験したことがないですね」
大樹製造部 新田智宏 さん:
「こちら仕入先様の方からの値上げ要請のFAXです」
フィルムの仕入れ先各社からは、去年秋ごろから段階的に値上げの要請がきているということです。
大樹製造部 新田智宏 さん:
「一次につきましては、コロナの影響ということで値上げ要請で、二次につきましては2022年の3月ぐらいからのウクライナ情勢ということで、直近になりますと円安ということで値上げさせてほしいという各社仕入れ先様の方から値上げ要請が届いております」
「第三次」の価格改定では、ほとんどのメーカーが「円安の影響」を理由にあげていますが、この急速な円安の進行で「四次」「五次」と続くのではないかという懸念もあるといいます。
大樹製造部 新田智宏 さん:
「弊社としましても仕入れの原料のロットを大きくしてその仕入れ単価を下げてみたりとか、社内での努力はしてるんですけども、なかなか追いつかない状況でありますので、得意先様に対して弊社としても値上げ要請に動かざるを得ないのかなという状況ではあります」
一方、曲がる器をはじめ、すず製品が人気の高岡市の鋳物メーカー・能作。原材料価格の高騰で、ことし6月に一部商品を1割から2割値上げしました。
能作 能作克治社長:
「これは10%ぐらい上げましたね、やっぱり上げられないものもあるんですよね。例えば箸置きなんかはうちは桐箱に入れて5000円っていう価格。やっぱり5800円とかってやっちゃうと記念品ラインから外れてしまうので。利益は薄くなっても価格はそのまま行こうとか」
年間100トンのすずを仕入れる能作。すずの価格は、ことし5月に1トン当たりおよそ600万円とコロナ禍前の2.5倍となり、能作は値上げに踏み切りました。値上げの要因となったすずなどの原材料の価格は現在、落ち着き始めたということですが。
能作 能作克治社長:
「材料はすべて海外ですから、一時ものすごく高騰したんですが、今はちょっと落ち着いてはいるんですけど、ただ円安の影響で落ち着いている分の影響が円安で消されているので、かなり高い状態で仕入れないといけない」
原材料のコストアップが経営に影響を与えていますが、能作の昨年度の売上げは過去最高の18億円。今年度は20億円の見込みです。背景には国内需要の回復があります。
能作 能作克治社長:
「例えば会社の周年記念とか記念品を抑えていた方が一気に噴きだした気はします。コロナ禍の中で受注が少ないときに、とにかく在庫は積まないとまずいよという話はしてたんですけど、まあそれがよかったのか、積んでいた在庫が一気にはけだしたっていうのがちょうど今期」
どこまで円安が続くのか。懸念はある一方で、円安を追い風とした海外からの観光客、インバウンド消費の回復にも期待を寄せています。
記者:
「この円安を背景に、海外での市場拡大を目指すのが、こちらの富山県南砺市特産のあんぽ柿です」
特産の「三社柿」を通常の干し柿より短い期間乾燥させて水分を残し、甘くてトロリとした食感が楽しめる「あんぽ柿」。
今シーズンの出荷に向けて南砺市の農家では、「あんぽ柿」と「富山干柿」の生産が始まったところです。
贈答品として人気の「あんぽ柿」ですが、国内での需要が減っていく中、富山干柿出荷組合連合会が目を着けたのが海外輸出です。
富山干柿出荷組合連合会 藤井敏一 会長:
「ここに『あんぽ柿』って、これが本当に高級品のしるしだそうです。それから干柿だったらこのライチョウ。台湾ではライチョウって言ったら高級干柿なんです。『富山干柿』って言わないの『ライチョウ』って言うんです」
組合では、2020年度から本格的に台湾などに輸出をスタート。海外輸出で2020年度は3450万円、昨年度は5800万円と順調に売上げを伸ばしています。
次に目指す市場は、というと…。
富山干柿出荷組合連合会 藤井敏一 会長:
「今後はカナダで考えています。香港が中国に返還された時に香港にお住まいの富裕層の方々がほとんどカナダに移住してしまっていると。カナダでの消費性向の高いっていうことがわかりましたので、じゃあ、今度の市場としてはカナダを目指そうと」
円安の影響を受けて、燃料や肥料にかかる費用は2割程度上がっていますが、国内での値上げは贈答品としての需要が落ち込むと見て見送りました。
富山干柿出荷組合連合会 藤井敏一 会長:
「国外は為替相場の関係あるから、値上げしても為替があるからそれは吸収できると。今度円高になっても、ある程度お客さんが付いてたらいいじゃないですか。そういうことで、ことしはまず市場に全部入ろうと。円安を利用して。この時しかないと思っています」
円安を追い風に「あんぽ柿」のおいしさを広め、「あんぽ柿」と「富山干柿」で輸出1億円突破が目標です。
富山干柿出荷組合連合会 藤井敏一 会長:
「1回食べたらもう絶対、病みつきになりますから」