地域別では大都市圏において観光・ビジネス目的の宿泊客が戻り、稼働率の改善が顕著でした。また、地方においても国内旅行支援策が後押しとなり、温泉地やリゾートホテルなどの施設の稼働率が回復しました。

都道府県別の増収割合を見ると、和歌山県が最も高く56.0%、次いで福岡県が50.0%、長崎県が44.7%と、特に九州地方で高い増収割合が見られました。

これらの地域では、アジアを中心とした訪日観光客の宿泊需要が旺盛だったことに加え、首都圏や近畿圏などの大都市部からの出張需要も取り込めたことが好調の要因としています。

一方で、業界全体としては課題も浮き彫りになっています。清掃スタッフなどの人手不足による稼働率の低下、従業員確保のための人件費増、エネルギーや食材費、リネンサプライ料金などのコスト上昇が、利益面での課題となっています。

2025年度も市場拡大が期待されていますが、労働力不足の影響がより顕著になる可能性が指摘されています。

帝国データバンクの調査では、2025年1月時点で旅館・ホテル業界の人手不足割合が、正規・非正規社員ともに5割を超えています。この人手不足への対応が、今後の旅館・ホテル事業者の成否を分けるポイントになると予想しています。

具体的な対策として、外国人材の登用や受付の自動化といったデジタル化・省人化投資への取り組みが求められています。これらの取り組みが、旺盛な需要を十分に取り込むための鍵となると考えられるとしています。

今後の見通しとして帝国データバンクは、円安を背景とした日本旅行の割安感が継続することから、訪日客需要は引き続き高水準で推移すると予測。一方で、国内市場では旅行需要回復の一巡や消費者の節約志向の高まりにより、特に高価格帯の宿泊施設で厳しい競争環境に直面する可能性を指摘しています。