あなたは “希望の光” なんだよって…

障害者の権利を訴えて活動を続けている母親の千鶴子さん。ハンセン病の人たちが受けた苦しみに自身の体験を重ね、長年ハンセン病問題と関わってきました。

「らい菌」に感染することで皮膚と抹消神経が侵される「ハンセン病」。現代では感染することも発病することもほぼない病気ですが、患者たちは国の政策で強制的に施設に隔離されて長年差別や偏見に苦しめられてきました。

街頭で講演会への参加を呼びかける河上千鶴子さん

ハンセン病は「旧優生保護法」の対象で、本人の同意がなくとも強制的に優生手術や人工中絶などを実施することができるとされていました。

千鶴子さんは各地の療養所を訪問し交流したり、富山で講演会や勉強会を開いたりしてきました。

長年交流を続けてきたのが、鹿児島県の「星塚敬愛園」で暮らしていた玉城しげさんでした。

富山市での講演会で話す玉城しげさん(2007年)

玉城さんは20歳の時に7か月の子どもを強制的に堕胎させられ、目の前で殺された経験があります。2007年、富山市で開かれた講演会で玉城さん(当時89歳)はこう語りました。

玉城しげさん:「口と鼻を厚いガーゼで看護婦さんが押さえて、看護婦さんが私に『しげちゃん、こんなかわいい赤ちゃんをごめんね、ごめんね』って言うて…」

提供:河上千鶴子さん

2010年、千鶴子さんの長男Aさんも玉城さんに会いました。Aさんは玉城さんから握手を求められたことを今も覚えています。

長男 Aさん「僕と握手しながら、(あなたは)希望の光なんだよって…」

旧優生保護法について知ったことで、長男Aさんは14年前に玉城さんにかけられた言葉の意味をあらためて理解したそうです。

Aさんは結婚して、今は2人の子どもの父親です。

長男 Aさん「本当に生んでくれてありがとうって思った。自分のことだけやったらあんまり気づかないんだけど。自分の子どもが生まれるってことは自分があるからだなって。それをもしかしたら壊してたかもしれんっていうのが腹ただしいというか。いい子生まれて来ないって、俺の事かって感じ」

Aさんは、自分の子どもたちにも千鶴子さんが経験したことや、旧優生保護法という恐ろしい法律が存在したことを話して聞かせたといいます。

千鶴子さん「自分の子どもに伝えてくれているっていうのがうれしかった」

旧優生保護法のような被害が起きたのはなぜか、まだ検証が不十分だと専門家は指摘しています。最高裁判決をきっかけに、あらためて同じような問題が繰り返されることがないように、しっかり検証して伝え続けていく必要があります。

※産婦人科医が「注射打とう」2度も中絶させられそうに…女性「怒りを覚える」産む権利奪った優生保護法 富山では不妊手術302件と判明