福島県内で長く愛される老舗の今を伝える『老舗物語』。この1年間で県内にある老舗、およそ50軒を紹介してきました。昔からの技術や味を受け継ぎ、未来へと繋いでいる老舗。伝統の受け継ぎ方はそれぞれ異なり、きっかけやキーワードがありました。
①後世に残すべきもの(山中煎餅本舗/喜多方市)
1枚1枚丁寧に焼き上げる、喜多方市名物「たまりせんべい」。それを作っているのが1900年創業の「山中煎餅本舗」。
切り盛りするのは六代目の渡部ひとみさんです。こだわりは炭火を使った手焼き。香ばしさの中に米本来のおいしさが広がります。
父・慎一さんが亡くなり、14年前に跡を継ぎました。
--渡部ひとみさん(六代目)「このお店が辞めたら、手焼きという焼き方も途絶えてしまうので。煎餅焼きは貴重ということを知って、続けていかなくてはと思いました。」
そんなひとみさんとお店を支えているのが、煎餅を焼き続けて50年以上の荒澤一利さんです。
--荒澤さん「身体が動く限りはやっていきたい。」
お店を長年支え続けてきた荒澤さんの技術は、息子の清人さんに受け継がれています。
--渡部さん(六代目)「125年も続いているので私もこの伝統を守りながら、たまりせんべいを知ってくれて喜多方に来てもらえるきっかけになればと思います。」
②ピンチをチャンスに(佐島屋印刷所/会津若松市)
10年前に七代目として跡を継いだ五十嵐弘太郎さん。昔ながらの古き良き伝統を残しつつ、時代にあった新たな技術を取り入れ、積極的に商品開発を行っています。
--五十嵐弘太郎さん「コロナ禍で注文がゼロ近くなった。そのあまった時間で自社製品を作ってみようと思って始まった。ピンチでした。でもそれがチャンスにもなるのかなって。そこで動けたのがよかったと思っています。」
さらにコロナ禍から生まれた、会津の伝統工芸品を使ったこんなものも。そう、会津木綿を使った犬用の甚平です。特徴的な縞柄や、生地の丈夫さ保湿性・吸湿性に優れた会津木綿の用途の幅を広げるドッグウェア。今や外国人にも大人気の商品となっています。ピンチをチャンスに変えて、印刷会社が取り組み始めた新たな挑戦は、着実に広がりを見せています。
③最後の仕事(川崎屋/二本松市)
二本松市で100年続く老舗の食堂「川崎屋」。先代のころから50年以上店に立ち続けてきたのが、鴫原佐智子さんです。
そんなお店の名物が…手打ちうどん。
--お客さん「コシがあっておいしかったですよ。もう60年くらい食べているね。うどんのように長く続いてほしいね。」
お客さんから愛され続ける川崎屋に今年、大きな出来事が。店主で夫の康浩さん。今年4月、79歳でこの世を去りました。その2か月後、佐智子さんはお店の暖簾を新しくしました。













