宮城県亘理町で海岸の砂を使ったアート作品が展示されています。
制作したのは地元の地域おこし協力隊の男性で、東日本大震災の後に鳴らなくなってしまった「鳴き砂」の新たな可能性を引き出そうと作品作りに挑戦しました。

亘理駅に隣接する悠里館(ゆうりかん)の連絡通路には13点の作品が展示されています。キャンバスに描かれた模様は砂が作り出しています。

作ったのは東京都出身の岩村寛人さん(38)。
亘理町でおととしから地域おこし協力隊として活動しています。
岩村寛人さん
「いろいろな方向から見た亘理の景色が、一つの絵の中にたくさん押し込まれているのがいいと思う」
亘理町にある吉田浜海岸には約3.5キロにわたって鳴き砂が広がっていましたが震災後は鳴らなくなってしまいました。岩村さんはこの砂に着目しました。
「今までは町の重要な観光資源であった鳴き砂が忘れ去られつつあることに危機感を感じた」
岩村さんの作品作りはキャンバスの表面を整え、立体的な形を作ります。
そのキャンバスを砂に埋め込み、表面から出ている部分にスプレーで色を付けます。

この作業を1週間ほど繰り返し、模様を描いていくといいます。
「こういうところが砂に書いてもらっている線。自分でコントロールできない」
また、吹き付ける色にも特徴があるといいます。
「亘理に住んでいると空が広くて、夕焼けであったり朝焼けの時間帯はすごくきれいな空模様になる」
砂によって描かれた淡い曲線。
作品は朝焼けから夜まで空の色の移り変わりがわかるよう並べられています。

作品を見た人
「けっこうきれいに描いていますね。」
「カラフルで鮮やかになっていいと思います」
岩村さんは亘理町の美しい景色や自然、そして吉田浜海岸の鳴き砂の魅力を作品を通じて発信し続けたいと話します。
「亘理の財産としての砂というものを忘れてほしくないという気持ち」
岩村さんの作品は当面の間、亘理町の悠里館の連絡通路に展示されます。
吉田浜海岸の砂浜は海水の自浄作用や清掃活動により一部では再び「鳴き砂」になっているそうです。