「自分ごとに立ち位置を合わせる」
五郎丸ファンの人たちと社長が直接会話をする場を設けたりもするのですか。

野々村
基本的にはないですが、最初はどこへでも行って話そうと思ったんです。例えば、コアなサポーターを(札幌)ドームに集めて「現状のクラブこうなんだ」「僕はこうしていきたい」というような話をしたことは何回かあります。
それが「野々村芳和とコンサドーレ札幌を考える会」と題したサポーターとのミーティング。選手強化にかけられる費用はどのくらいか、上位クラブとどれだけの差があるのかなど、具体的な数字を示して経営状態を明確に伝えた。
野々村
当時、サポーターは「コンサドーレは強い、本当はもっとやれるはずだ」と思っていたんです。勝てないと、ブーイングが起こったり、会場の空気が悪くなる。でも、サポーターとクラブの空気が悪くなると、多分勝てないんです。
それを防ぐ上で、サポーターに現状を全て伝えました。「いま、売り上げはこれぐらいしかなくて、この中でJ1に上がるのはちょっと難しいんだ」と。「だから、まず何年後かに僕はここまで売り上げを持っていく。その間は、今、J2のトップレベルのクラブとは、選手強化に使えるお金が10億円ぐらい差があるんだけど、その差はホームゲームで皆さんがつくってくれる雰囲気で埋めて勝とうよ」と言い続けていました。
サポーターたちも、立ち位置が分かると、うまくいかなくても「これから成長していけばいいよな」という風になり、クラブを取り巻く雰囲気はだいぶ良くなるんです。サポーターに現状を伝え、自分ごとにしてもらって立ち位置を合わせることが、一番最初にやったことですね。