「昇格しろなんてとてもいえない」

野々村
(当時の札幌は)J1には、ほぼほぼ上がれない予算規模。でも、社長になって何を目指すかを考えた時に、やはり多くの人がクラブに望んでいるのは「まずJ1に戻ること」だろうと。でも、そのためには売り上げが25億円とか30億円ぐらいまでいかないと、J1に上がれない。

野々村チェアマンが札幌の社長に就任した当時、2013年のJリーグを営業収益で比較すると、J1の平均が約30億円に対し、札幌は約10億円とその差は歴然。さらに、J2の中でも規模の大きなクラブとは明らかな差があった。

野々村
経営者としては、一定レベルの売り上げも確保できていないのに「昇格しろ」なんて、とても言えない。だから、まずそのレベルに到達するためにどうしようかと考えました。中でも一番大事だと思ったのは、サポーターの人たちを“仲間”だとすることでした。

五郎丸
サポーターとの付き合いは、現役時代とは全く違ったんですか。

野々村
サポーターたちが「スタジアムの空気をよくつくってくれる」と、「結構勝てるな」という感覚を、現役時代の晩年、特に感じていました。社長に就任し、いろんなことを想像していく中で、サポーターの皆さんは仲間、簡単に言えば「社員みたいなものだ」と思うようになりました。
今年3月にJリーガー経験者として初めてチェアマンに就任した野々村芳和チェアマン

当時、コンサドーレの社員は30〜40人ぐらい。でも、コアなサポーターが5000〜1万人ほどついてくれていたんです。このコアなサポーターたちをパートナーとして捉え、1万人規模の会社だと思えば、結構やれるんじゃないかと思ったんです。