【控訴審での弁護人の主張】
今回の起訴は、事故後の過失運転致死罪と同時に起訴することが可能だったのに、7年も経過した後、新たな証拠もないのにされたもので、公訴権のらん用にあたる。

救護義務達反と報告義務違反が成立すると判断した点、一事不再理原則に違反する点に誤りがある。

量刑は重過ぎて不当であり、執行を猶予すべき。

以下高裁の判断
【不法な公訴にあたるか否か】
検察官は公訴の提起をするかについて広範な裁量権を認められている。

今回の起訴について、検察官の裁量権の逸脱により公訴が無効となるような事情はなく、違法ではない。

【事故後の被告人の行動】
被告人は、衝突地点からおよそ95メートル先で車を停止させた。

人をはねたと思って現場に向かい、午後10時8分ごろ、横断歩道付近で靴や靴下を発見し、およそ3分間、捜すなどしたが、被害者を発見することができなかった。

10時11分ごろ、車に戻りハザードランプを点灯させた後、飲酒運転がばれないようにと考え車からおよそ50メートル移動し、10時12分ごろ、コンビニで口臭防止用品を購入し、服用した。

その後、現場に向かい、被害者が発見されると駆け寄り、人工呼吸をするなどした。

その場に到着した被告人の友人が、10時17分ごろ、119番通報した。

被告人は、事故後、直ちに車を停止して被害者の捜索を開始しており、車に戻ってハザードランプを点灯させたことについても、危険防止義務を履行したものと評価できる。

コンビニに行ったことについては、被害者の捜索や救護のための行為ではないものの、要した時間は1分余りで、車からの距離も50メートル程度に留まっており、その後、直ちに現場に向かっていることなどから、一貫して救護義務を履行する意思は持ち続けていたと認められる。

全体的に考察すると、直ちに救護措置を講じなかったと評価することはできないから、救護義務達反の罪は成立しない。