長野県消防防災ヘリの墜落事故から5日で8年。

隊員たちはいまも犠牲になった仲間から人の命を救うという志を受け継ぎながら、「二度と事故を起こさない」という強い誓いも胸に活動にあたっています。

訓練のかけ声:「周囲の状況よし!ホイスト巻き上げ!」

県の消防防災航空隊。
ヘリの格納庫では日々、訓練が行われています。

山岳地帯での救助を想定し、けが人を収容するまでの手順を確認します。この日は、来月入隊する2人を含む7人が参加。

航空隊は、県内13の消防本部などから優秀な人材が派遣される人命救助のプロフェッショナル集団。毎年、2人ほどが入れ替わります。

指導するのは、副隊長の高塚大輔さん。

間もなく隊を離れるベテランで、新しい隊員に培ってきた技術や知見を余すことなく引き継ぎます。

消防防災航空隊 高塚大輔副隊長:
「私はこれで卒隊になりますが、おそらく新隊員は帰った後も、家であのノートを見て復習をして、あしたの予習も兼ねてやってくるんだろうと頼もしくも思いますし、しっかりと次につなげていってくれると信じています」

2人は、入隊後すぐに一人前として任務にあたれるよう、一つひとつのアドバイスを自分に落とし込んでいきます。

消防防災航空隊 近藤智宏隊長:
「安全は努力を怠ると簡単に壊れてしまうと考えていて安全に対する取り組みに終わりはありませんので、そういった航空隊としての考えを新隊員にも引き継いでいくことで安全文化に取り組む考えが途切れることなく続いていくように心がけています」

『安全の追求に終わりはない』
何度も何度も救助の手順を反復します。
根底にあるのは二度と事故を起こさないという固い誓いです。

操縦士の上地洋平さん。毎朝、慰霊碑を訪れています。

消防防災航空隊 上地洋平操縦士:
「前日の安全を見守ってくれてありがとうございます、きょうも見守ってくださいと報告しに来ています。朝来るとスーッとその日も頑張れるような気持ちになるので毎朝来ています」

初心に立ち返る時間だといいます。

消防防災航空隊 上地洋平操縦士:
「気持ちが慣れちゃうと必ず慢心していつでも足元をすくわれる世界にいると思うので、基本基礎に立ち返る意味でも毎日来ています」

パイロットに任期はなく、上地さんは8年前の事故当時も所属していた唯一の隊員です。

消防防災航空隊 上地洋平操縦士:
「事故を目の当たりにして2度と墜落事故を起こしてはならないですし、みんなに悲しい思いをさせていけないという覚悟があります」

8年前の2017年3月5日。
県の消防防災ヘリ「アルプス」が墜落し9人が死亡した事故。
人命救助に尽くしてきた仲間の死。
悲しみの中、残された隊員は遺志を受け継ぎ再出発することを決意しました。

2020年12月、リース機などでの運航を経て待望の新機体が導入されました。
「アルプス」の後継となる機体の購入にかかったのは4年。

この間、県内で発生した遭難や災害などへの出動は、隣県からの応援に頼らざるを得ない状態が続きました。