希少な国産の羊肉。ホテル日航熊本が提供する極上フルコースのメインディッシュに使われています。

ホテル日航熊本 中野 省吾 総料理長
「我々フランス料理をする人間には、羊は特別な存在なんですよ。それが、ましてや九州で羊を育てる、そんな思いを持った人間がいるのか…」

その羊の名は「阿蘇しろひつじ」名前の通り、阿蘇の草原で育ちました。

阿蘇さとう農園 佐藤 智香 代表
「阿蘇の恩恵を受けて育っている素材を、ぜひ楽しんでほしいなって」
阿蘇さとう農園代表の、佐藤 智香(さとう ちか)さん。彼女が中心となって、全国的にも珍しい国産の羊を育てています。

それには、この草原でなければならない理由がありました。
佐藤さん
「草原は農家さんたちがずっと維持してきたというのを改めて知って、何ができるかなと…」
野焼きや放牧など、人の手によって約1000年前から守られてきた阿蘇の草原。しかし、人口の減少や後継者不足でその維持は年々難しくなり、草が伸び放題という場所も増えてきました。

本当は「あか牛を飼えたら」と思っていた佐藤さんですが、エサの費用や放牧する用地の確保、そして大きな牛を扱う体力。いずれも、当時 素人の佐藤さんには高いハードルでした。
そんな時に出会ったのが、東海大学農学部で羊の飼育法を研究していた、實田(さねだ)さんでした。

阿蘇戸狩牧場 實田 正博さん
「羊だとこの(大きくない)サイズなので、女性でも年配の方でも飼育できるんじゃないかと思っていました」

佐藤さん
「實田先生は、東海大学で40年以上 羊の飼育を続けてきている。阿蘇でも飼える動物なんだなと思いましたし、毎年毛刈りしなくてはいけないというのは、人と一緒に暮らしていくのにすごく向いている動物なんだなというのがあったので」

佐藤さんは「阿蘇しろひつじ」という愛称を決め、2年前から羊の飼育を始めました。

阿蘇の牧野では、あか牛と羊の「混牧」を行っています。
佐藤さん
「あか牛も馬もそうですし、羊もいっぱい放牧して、草原をしっかり利用して阿蘇の素敵な景色を残していきたい」

エサ代などのコストは、牛の10分の1程度。広い牧野だけでなく、休耕地や使われなくなった農業ハウスを活用することで低コストでの運営を実現しました。
佐藤さん
「本当にこれくらいの余っている畑でも放牧は始められると思いますし、他の仕事をしながらでも飼える動物にしていきたい」

阿蘇しろひつじは、料理人たちから高い評価を受けています。特徴は、臭みが少なくきめの細かい食べやすい肉質です。
ホテル日航熊本 江崎 雄一 副総料理長
「日本人は羊肉を嫌う傾向にある。佐藤農園の羊はちょっと違うよっていうところをアピールして頂いて、広まっていったらいいなと思います」

佐藤さん
「自由に走り回って、自由に食べて、自由に休んでという、阿蘇の恩恵を受けて育っているので健康的だと思います」