夏の海水浴シーズンを前に全国各地の海水浴場で水質調査が始まった。環境省が毎年とりまとめて水質AA~不適の5段階にランク付けして発表するもので2022年は756の海水浴場でサンプリング調査が実施された。

◆「今年こそは海水浴」ボトルに詰めて持ち帰る

10日に取材に訪れたのは福岡市の志賀島海水浴場。福岡市では早いところで6月14日に海開きが予定されているため、この時期に実施しているという。この日は、市から委託された業者がボートで沖に出て「海水」をサンプリングしていた。海中にボトルを下ろし、水を入れて持ち帰るのだ。「安心して海水浴をしてもらうため」と目的を話すのは、福岡市の課長だ。新型コロナ下で密集を避けるために海水浴を控えていた人も少なくないはずだ。

江頭勝環境保全課長「今年こそ海水浴をしたいという人もいると思いますので、ぜひ楽しんでいただきたい」

◆公害が深刻で海が汚れていた時代に始まった

「水質調査」は、全国の自治体(都道府県と市町村)が主に次の4つの項目を調べることになっている。対象は、海水浴場・湖沼・河川の水浴場で1973年の調査開始時は314か所だったのが2022年は756か所まで増えている。

・ふん便性大腸菌群数
・油膜の有無
・化学的酸素要求量(COD)*有機物による汚濁の指標
・透明度

目を引くのが“ふん便性大腸菌群数”。下水道の普及率が低かったころ、海は今では考えられないほど糞尿で汚れていた。そこで、海水浴に適した場所かどうか「目安」が求められるようになった。1970年に閣議決定された海水浴場水質保全対策要綱によると、当初は▽健康障害が発生する可能性の有無▽ニューヨーク市衛生局などアメリカ各州の基準を参考に大腸菌群数が100ミリリットルあたり1000以下としたようだ。その後、83年に調査方法が変わり、サルモネラの検出を重視するように。翌年の84年には、「快適」「適」「不適」の3つの区分が設けられた。さらに「適」(水質AA,水質A)「可」(水質B、水質C)と「不適」と細分化され今に至る。当初は「大腸菌群数(MPN)」を調べていたが、“ふん便汚染に関する知見が集積された“ことにより「ふん便性大腸菌群数」が同じ100ミリリットルあたり1000以下を「適」と判断するようになった。