イスラエル滞在6年半の記者に聞く

神戸:ここからは、イスラエルに詳しい毎日新聞の大治朋子編集委員に登場してもらいます。大治さんとは、私が前職の毎日新聞で社会部にいた時、一緒に仕事していた時期があります。

毎日新聞編集委員の大治朋子さん

【大治朋子 プロフィール】
毎日新聞編集委員。1989年に入社。防衛庁(当時)による個人情報不正使用に関する調査報道で2002、2003年度の新聞協会賞を2年連続受賞。ワシントン特派員時代の米国による「対テロ戦争」の暗部をえぐる調査報道で2010年度ボーン・上田記念国際記者賞。著書に『勝てないアメリカ-「対テロ戦争」の日常』(岩波新書)、『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』(講談社現代新書)、『歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか』『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』(以上、毎日新聞出版)など。

大治朋子さんの著書

神戸:大治さんは今年6月、『「イスラエル人」の世界観』(毎日新聞出版、税込み1980円)を出版しています。エルサレム支局長の後、テルアビブ大学などで学び、現地で6年半、取材に研究に時間を費やしています。ガザへの攻撃が激化していて、今日はトランプ氏とネタニヤフ首相の会談の速報も入ってきています。ガザの現状は、どうなっていると考えたらよいでしょうか?

大治朋子編集委員(以下、大治):本当にすごく狭い場所に、200万人以上の方が押し込められている状態です。以前は食料が400か所ぐらいで配られていたんですが、今年春からは4か所になってしまいました。2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降は、イスラエルがガザを封鎖して記者が中に入れないので実態がなかなかわからないのですが、最近はご飯が1日1食食べられるか食べられないか、水が手に入るか入らないか、そういう生活ですね。

神戸:食料品を取りに行ったところをイスラエル軍に攻撃されて死者が出ている、という報道が何度も出ています。

大治:市民からすると、食事をもらいに行っているだけなのに、突然銃声が響き出してパニックのようになって何人かが亡くなる。イスラエル側は「ハマスが撃ってきた」と言うし、市民は何が起きているか分からない。戦場といえども民間人は保護する、といった一定程度のルールが本来あるべきですが、それが守られているようにはみえない。封鎖されているので検証のしようもない状況です。