ノーベル賞ウイークが始まった。化学賞が発表される10月9日の朝、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した、日経エネルギーNextの山根小雪編集長は、受賞が有力視される日本人研究者の発明について紹介した。
聞きなれないペロブスカイト太陽電池
きょう発表されるノーベル化学賞に、桐蔭横浜大学の宮坂力教授の名前が挙がっています。宮坂氏はペロブスカイト太陽電池という、次世代型の太陽電池を発明したことで知られています。実はこの技術の実用化について、9月27日に福岡市が採択された、環境省の脱炭素先行地域事業の中にも入っています。
具体的に言うと、2030年にこのペロブスカイト太陽電池をみずほPayPayドームに取り付けるというもの。ドームの屋根ってかなり広い上に、表面がカーブしています。カーブしたところにも付けられる、というのが、この新しい太陽電池なんです。
それにしてもペロブスカイトっていうこの言葉。これ、結晶構造の形を示す言葉なんです。太陽電池を作るときは、ヨウ素と鉛を使ってこのペロブスカイトという構造を作ります。そこに光が当たると、電気エネルギーが発生するんです。
この仕組みを2019年に見つけたのが宮坂教授なんです。でも発見された当時は、光をたくさん当てても、あまり電気が発生しなかったから、そんなに話題にならなかったんです。でも、その数年後に一気に発電効率が上がって、世界で注目されるようになったんです。
この太陽電池の特徴はドーム球場の屋根につけられる、つまり、薄くて加工がしやすいことなんです。ざっくり言うと、ドロドロに溶かした溶液を、フィルムとかそういったものに塗布することによって太陽電池を作ることができるんです。フィルムなら曲げられるし、すでにあるもののに塗るだけなので、例えば窓ガラスと一体にするとか、窓に付けるカーテンに塗っても発電するみたいな話もあって、すごく加工成形がしやすいんです。
場合によっては印刷技術を使ってシートの上に印刷して作ることもできる電池なんですよ。だからこれってつまり、作るためのコストがすごく安くなるんです。
経済安全保障上もメリット
この技術、もう一つポイントがあって、先ほどヨウ素と鉛で作ると言いましたが、ヨウ素は実は世界で日本が生産量第2位なんですよ。日本は資源が乏しい国として有名なのに、ペロブスカイト太陽電池については原材料を輸入に頼ることなく、国内で作ることができる。つまり、経済安全保障上もメリットがあるんです。
一般的な太陽電池っていうと、黒いパネルで曲げられないし、固いものです。そして立派な屋根や固い地盤の上などじゃないと、耐荷重の問題があるんです。従来の太陽電池は例えるなら液晶テレビみたいな作り方なんですよ。ガラスの上にいろんなものを吹き付けて、ガラスでサンドイッチして。だからすごく重たいし、曲げることも当然できない。
それが、とくに九州で車を走らせたら、太陽光パネルがもうあちこちにあって、これ以上はあんなふうに太陽光パネルを増やせない感じがするじゃないですか。今つけられる場所にはだいぶついてしまって、住宅の屋根も新築ならいいけれど、中古でそんなに重たいもの載せられないとか、制限も出てきます。
でも、ペロブスカイト太陽電池なら、それこそみずほPayPayドームみたいな不思議な形をした屋根をしているとか、屋根はないけど壁はあるとか、いろんなところに付けることができます。日本は2050年にカーボンニュートラルって言っています。そのためには太陽光発電をもっともっとつけていかなきゃいけない。だけどなかなか現状のものはつけられない。
そこで、ペロブスカイトだったらどこにでもつけられるじゃないか、ということで、今大注目されています。これ、例えば集合住宅だったら、ベランダの柵とか、日当たりがよい窓ガラスには、塗布する量を調節して光が透過するような状態にするとか、内窓に付けるようなタイプがあったりとか、その加工の仕方についてはメーカーがいろいろ研究をしています。