「大切な人にそっくり」な人形に触りたい

この人形たちを作ったのは佐賀市の人形作家、江口美千代さん(76歳)です。

ほのぼの創作布人形工房 江口美千代さん「昭和の懐かしい記憶の中の風景がテーマ。顔の表情は『人形らしく』ではなく、見ると誰かに似ているひょうきんな顔とか、おじちゃんに似てるおばあちゃんに似てるような顔を主に作っています」

人の写真と一緒に飾られている人形は、その人をまねて作られた”そっくり人形”です。「亡くなったおばあちゃんにいつまでも隣にいてほしい」という家族の依頼で作りました。

”そっくり人形”を作り始めたのは25年前。知人に「結婚で家を出る娘のウェディングドレス姿を人形にしてほしい」とお願いされたのがきっかけでした。これまでに約400体を制作してきました。

江口美千代さん「大切なご家族だから、パターンはいろいろあります。ご両親、お子様、おじいちゃん、おばあちゃん。写真でなくて、こういう立体的なお人形にしてちょっと触ったりしたいということで」

人形に声をかけながらの制作

1つ作るのに10日ほどかかります。亡くなった人をしのぶ人形の依頼が多いこともあり、写真や手紙を元に、魂を込めるように丁寧に作り上げていきます。

江口美千代さん「真剣勝負でね、時には顔ができる前に、『話したい』気持ち。『お父さん、頑張ったね』とか、小さい子供だと『まだお母さんの側にいたかっただろうにね』とか自然に声をかけます。『人形には魂が入る』と言うじゃないですか。そうなるともう、ただの人形ではないですよね」

人形に着せる服は、本人が着ていた服を切り出して作られたものです。

江口美千代さん「その辺にある生地を着せても、なんかちょっとそれはあんまり嫌だなと思って。着物でも洋服でも全部解いてしますけど、かえって手間が要りますよ。だけど、そっちの方が思い出としては絶対いいじゃないですか」