本名正憲 アナウンサー
開催地は今回、岸田さんが広島選出ということで広島になったと思いますが、この総理の判断というのが大きいんですよね?

政治ジャーナリスト 青山和弘 さん
前回の伊勢志摩サミットも安倍さんが決めましたが、伊勢神宮に各国の首脳を連れて行きたいという思いが強かったんです。そこは、日本の大和魂の原点ともいえる場所ですから、そこで各国首脳が石の上を静かに歩く、まさに日本の原風景の中に各国首脳がいるという光景を見せたかったんですね。それは、まさに安倍さんらしい発想だと思います。

本名アナウンサー
G7サミットはセレモニー的な部分もありますが、どのようにお考えですか?

​青山和弘 さん
セレモニー的な部分もあるが、実質的な意味合いもけっこうあります。各国の首脳が核兵器の実態について触れる機会でもありますし、ウクライナ問題や対中国問題などで、各国が足並みをそろえるということは、ロシアや中国を封じ込める意味でも大事なことです。特に日本などは、防衛費を増やすという提案に対し、外交に力を入れるべきだという意見が多いですよね。

まさにその外交そのものがこのサミットなんです。各国の首脳との意見の調整や考えの共有が、その後の平和の展開にプラスになることは計算に入れられないものです。数値化できないけれど、計り知れない価値があるんです。だからこそ、このサミットの意義は非常に重要で、単なるセレモニーとは言い切れないところがあります。

本名アナ
今回のサミットで、岸田総理はどんな思いで臨まれるんでしょうか。

​青山和弘 さん
岸田さんは、すごい意気込みを持っています。外務省の人たちと一緒に、失敗は許されないという強い緊張感を持っているようです。たとえば、官邸の入口には「広島サミットまであと何日」という掲示板があり、総理の執務室にも関連するポスターが貼られているそうです。このサミットは総理にとって重要な舞台で、特に外交や安全保障に自信を持つ岸田さんにとって、この機会を単なるセレモニーで終わらせず、内容のあるものにしたいという意志が強く感じられます。

本名アナ
サミットの結果は、内政にも大きな影響を与えるでしょう。成功すれば支持率は上がるだろうし、解散がどうなるのかについてもさまざまな推測が飛び交うでしょう。

​青山和弘 さん
政権の浮揚につなげたいという思いはもちろんあるでしょう。しかし、一方で政策面でも影響があります。例えば、防衛費の増加や増税について、日本がサミットで約束したからこそ強化する必要があるという説得材料として使う可能性があります。

前回の伊勢志摩サミットでは、安倍さんが、現在の経済状況がリーマンショック前夜と同じだという内容の文書を外務省に知らせずに首脳に配り、経済の下支えをしなければならないため消費税を上げられないという論理を展開しました。その数日後に消費税の2年半延期を決めたのです。つまり、サミットでの発言が国内の政策にも影響を与えました。自身の政策に利用することはよくあることで、岸田さんもそういったことを考慮しているでしょう。選挙で政策を問う際の1つの後ろ盾として利用したいという意図もあると思われます。

本名アナ
そしてもう1つ、ウクライナに1日も早く平和が訪れますようにと。

政治ジャーナリスト 青山和弘 さん
ウクライナの戦争が始まって1年ちょっと経った今、非常に重要な時期に差し掛かっているときに開催されるサミットなので、岸田さんも重要性を理解しています。そのため、岸田さんにとってウクライナ訪問は絶対条件だったんです。外務省幹部をしかり飛ばして、かなり強引にウクライナに行ったんですね。この経験を生かし、今後のロシアの制裁の発表や、リモートで参加するゼレンスキー大統領との対話など、どのように生かしていくかが岸田さんの手腕の見せ所となるでしょう。

(RCCラジオ「おはようラジオ50周年企画 G7広島サミット直前スペシャル 広島の声」5月14日(日)放送より)