ずっと追いかけてきた絶対的な目標が揺らいだ福部選手。
燃え尽き症候群にも似た彼女を救ったのはコーチの『自分の記録の更新だけを目指すのはどうか』という言葉でした。

尾崎雄祐コーチ
「陸上はじめた時って、記録が伸びていくところにすごく楽しさだとか嬉しさだとかいろんなモチベーションを感じてたはずなので、世界でファイナルに残るだとか、勝負に勝つだとか、そういったことじゃなくて、もう1度原点的なところに立ち返って競技をするのもいいんじゃないかなと思って話してみましたね」

自己記録の更新という単純明快な目標設定に福部選手は再び目の光を取り戻します。

そして迎えた9月の国内大会。なんとここで好タイムで優勝!
優勝後のインタビューでは次に目指す目標タイムを公言しました。

福部真子 選手
「アジア記録の12秒44だけ、今後は1つに絞って、やっていきたいなというのは思っています」

再び自分を奮い立たせる目標を見つけた福部選手でしたがこの直後、突然の病が襲いかかります。

去年10月に発症した「組織球性壊死性リンパ節炎」、通称・菊池病。

20代から30代の女性に多いとされるこの病気は原因不明で特効薬がありません。日本記録更新、オリンピック出場、順調に世界トップへの階段を登り続けていた福部選手は大きなショックを受けました。

福部真子 選手
「12秒44を目指してがんばりますって言ったほんと1,2ヶ月後くらい?2ヶ月も経ってないかくらいだったので『うわ~あんな大きいこと言っちゃったけど、やばいこれ戻れるのかな。まずトラックに』っていう、どんな病気が分からなかったので、診断された当初は。やめたいとか、引退とかじゃなくて『もうちょっとがんばってみたかったな』とか『もうちょっとトップで走り続けたかったな』っていうのはずっと思ってましたね」

菊池病の発症から半年。
病気の症状だけでなく急激に戻した筋肉量に関節が追いつかず、痛みを感じるなど、いまも決して万全のコンディションとはいえません。

それでも実際に顔をあわせると変わらず元気な笑顔を見せてくれる福部選手。取材の終わりに今シーズンの目標を聞きました。

福部真子 選手
「今シーズンは難しいんですよね。目標はもちろん、東京の世界陸上出たい、勝負したいっていうのはあるけど、そこを目標にしちゃうと壊れるんじゃないんかと思って自分が。壊れちゃったときに、この先続けられない可能性があるから、それは避けたいというか、もちろん自己ベストを出したいっていうのは毎シーズン思ってることだから、とりあえずそれは1つ確定してるけど、具体的な目標っていうところをどう当てようかなっていうのは、まだ悩み中というか、1本走ってみたりとか、試合に出て、また熱がバッて出たときにどうするかとかって対症療法になってくると思うから、どうしよう、まだ決めてないですね」