「被爆再現人形」に強い思いを持ち続ける被爆者がいます。
98歳の阿部静子さん。18歳で被爆し、顔や右半身に大やけどを負いました。あの日、人形と同じように、がれきの街を逃げました。
被爆者 阿部静子さん(98)
「皆さん、人形と同じように逃げよう逃げようとして一生懸命でした。私もその中の1人でした。こちらから先の皮膚がずるっと剥けて。爪のところから垂れ下がっておりました」

証言活動を続けてきた阿部さんは、まず人形を見てもらうことで、子どもたちの理解が深まったと話します。
被爆者 阿部静子さん(98)
「人形で想像できますから。皆さん傷の痛みを訴えたり、うめき声を発したり。人形では血の臭いも何もしておりませんが、想像して人形を元にして想像して聞いてくださいという風に証言を進めておりました」

そして今も、原爆の悲惨さを生々しくイメージできる人形の展示復活を望んでいます。
被爆者 阿部静子さん(98)
「『被爆再現人形』も生ぬるいんですけども、せめて、せめてね、その人形から何かを考えて導き出してほしいと。私ども被爆者の気持ちを代弁してくださる人形だと思って、私は感謝しておりました」
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現代アート作家の菅 亮平さん。今後も「被爆再現人形」の研究を続けていくつもりです。

現代アート作家 菅 亮平さん(広島市立大学 芸術学部 講師)
「“実物資料” と“作りもの” のどちらかが優れている、劣っているということではなくて、どちらにもやはり果たす役割とその限界があるのだと思う。それをアートの専門家である私自身が問いたい」
原爆の悲惨さを“アート”でどう伝えていくのかー。人形は大きなヒントを与えてくれます。
