「いま残されているのはここだけ」。広島に原爆が落とされた直後から負傷者が殺到した病院があります。被爆建物でもある広島逓信病院旧外来棟。いまは被爆資料室となっていますが、床や壁に貼られたタイルは当時のまま。まさにその場所で、原爆によって傷ついた人たちへの治療が行われていました。被爆者を見守り続けていた建物は、当時を追体験できる数少ない場所です。

爆心地から約1.3キロにあった広島逓信病院は、倒壊こそ免れましたが、火災に見舞われました。その場にいた医師や看護師たちの懸命な消火活動により、わずかではありましたが、医療器具も守ることができたといいます。そして、原爆投下直後から、負傷者が殺到しました。

治療を手伝う本多浜子さん

広島逓信病院の看護師だった本多浜子さんは「何日経ってもその行列が途絶えなかった」と話します。

広島逓信病院の元看護師 本多浜子さん(1995年取材)
「もう手元が見えさえすれば。手元が見えないようになるまで、毎日、治療をしていた」