年齢問わず人気がある登山や山歩き。これから秋にかけて始めてみたいとお考えの人も多いと思います。ですが、山は常に危険と隣り合わせです。遭難事故を防ぐためにはどんなポイントに注意すべきなのか、専門家に聞きました。

7日午後1時前、広島県江田島市大柿町の陀峯山で登山をしていた男性から「登山中に滑落して自分で動けない」と119番通報がありました。

警察と消防が捜索し、翌朝、滑落したとみられる場所からおよそ100m下の谷で男性を発見しましたが、その後、死亡が確認されました。亡くなったのは広島市に住む40代の男性で、滑落の原因ははっきりしていませんが、死因は全身を強く打つなど多臓器不全だということです。

登山中に起きる遭難事故、県内ではここ3年でその件数が増えていて、去年も4人の方が亡くなられています。特に9月は1年を通して遭難事故が多い月です。事故を防ぐにはどうすればいいのか、専門家に話を聞きました。

広島登山研究所の代表で山岳ガイドの 松島宏 さんは、特に初心者にとってこれからのシーズン、3つの点に注意が必要だといいます。

ポイント①「単独登山は避ける」
松島さん「何かあれば誰も助けてくれない。(遭難時の)通信手段なども含めて1人というのはリスクが高い」

単独登山はできるだけ避けて、経験者と同行することで道に迷うなどのリスクを減らせるそうです。

ポイント②「自分の体力に合った山を選ぶ」
松島さん「山の情報はガイドブックなどで十分調べて自分の体力や技術に見合ったルートなのかを調べて吟味したほうがいい」

ポイント③「不測の事態に備えた装備を」

天候の変化など不測の事態に備えた装備を準備することも重要だといいます。

松島さん「一番危険なのが濡れて風に吹かれるということ。一気に体温を奪われて意識もなくなってくるという低体温症が非常にこわい」

登山用品の専門店も防寒対策に注意を促します。

好日山荘広島紙屋町店 高松渉 さん
「秋は気温が下がってきますので、夏以上に防寒対策が大事です。特にこういったカッパですね。レインウェアは雨対策だけではなく防寒着にもなりますので、必ず持って行ってください」

赤・青・黄色など自然の中で目立つ色を選ぶと遭難時にも発見されやすいといいいます。また、けがで歩けなくなることも遭難の原因の一つ。スニーカーを履いて山に登る人も少なくありませんが、初心者にはまずは登山靴を薦めるそうです。

高松さん
「普通のスニーカーと比べると非常に硬くてグリップがよく効くので滑りにくい」「特に登山の装備では靴が一番大事になります」

また、日没時間も早くなります。ヘッドライトは足元を照らすだけでなく、自分の居場所を伝える目印にもなります。

「転倒や滑落でけがしてしまった場合にはその日のうちに帰れない。そうした場合にも対応できるような装備が必要になります」

気を付けるべきポイントをおさらいします。

まずは装備です。スニーカーではなく登山靴を履きましょう。カッパは天候や気温の変化だけでなく救助の際の目印にもなります。ヘッドライトやホイッスル・救護セットなど不測の事態に備えた準備をしましょう。

また、装備以外にも準備が必要です。できるだけ1人での登山は避け、必ず登山届を出しましょう。県警も提携しているアプリでも作成できますので、これを活用するのも良いでしょう。そしてなにより、自分の体力に合わせた山を選ぶということに気を付けましょう。

山岳ガイドの松島さんによると、特に最近はSNSなどで安全ではないルートで登山をする投稿が増えているそうです。必ず、ガイド本などで事前に正しいルートを予習し、無理のないスケジュールで、登山を楽しんでいただければと思います。