8月10日で開業20周年を迎えた『ゆいレール』。4年前には路線を延長し、10日からは3両編成が始まるなど、変化をしながら、県民の移動手段として発展してきました。
4年前に開業した駅の1つ、「てだこ浦西駅」には駅名にかけた地元の人たちの情熱がありました。経済発展も期待される駅周辺の開発の現状、そして新たな延長を望む地域の声を取材しました。
『てだこ浦西駅』に込められた地元の思いとは
浦西自治会 宜野座富夫会長
「原野で人が入り込むような所ではなかったですね。まさかこういうのができるとは、30年、20年前は思わなかったんじゃないかなと思います」

4年前に開業した『てだこ浦西駅』。この駅名にひと際愛着を感じている人がいます。
浦西自治会 宜野座富夫会長
「地域で取り組んで名前が付けられた喜びは、何にも代えがたいものだと思っています」
浦添市の浦西自治会で自治会長を務める、宜野座富夫さん。およそ10年前、新たに開業する駅の名前をめぐり、地域をあげて奮闘しました。

延長した4駅について、当時、石嶺駅は「いしんみ駅」、経塚駅は「沖縄国際センター駅」、浦添前田駅は「浦添城駅」、てだこ浦西駅は「てだこ駅」など、現在とは違う名前が候補としてあがっていました。
浦西自治会 宜野座富夫会長
「周りの自治会、あるいは色んな職場とかにも、ぜひ浦西を推してくれということで、手分けして呼びかけをしました」
これでは、地元“浦西”という名前が残らないと、危機感を抱いた宜野座さん。駅名アンケートが始まると、住民たちに協力を呼びかけ、“浦西”という名前を残す900通もの回答を集めました。

ふたをあけると『てだこ駅』という有力な案をおさえて『浦西駅』が1位に。最終的に折衷案で現在の名称『てだこ浦西駅』となりました。
浦西自治会 宜野座富夫会長
「みんなとても喜んでくれましたね。名前ですから未来永劫ね、変わることは多分ないと思うんで、本当嬉しい限りです」
その後駅周辺では、まちづくりが進んでいます。来年度には、幸地インターチェンジが開設予定で、駅を拠点に本島中北部からのアクセスもよくなり、バスや自家用車からゆいレールへの乗り継ぎなど、交通ハブとしての期待も高っています。
そこでますます気になるのが、路線の延長です。
「MICE開業へ」東海岸までの路線の延長を求める西原町

現在、那覇と浦添をつなぐゆいレールは、那覇から糸満まで本島南部に延びる路線や、中部に向けた路線など5つのルートで延長が検討されています。しかし、どの路線も採算が合わず、赤字試算となっていることから、事業化のめどはたっていません。
そんな中、延長に向けたラブコールを送り続けているのが、西原町です。
上間明町長(2018年)
「西原町へモノレールを延伸させるため、町民一丸となって頑張っていきましょう」
5年前、東海岸までの延伸を求めて総決起大会を開催。東海岸までの延長を、町民一丸となって求めていく決議を採択しました。

ここ数年、コロナ禍で活動が下火になったものの、誘致に向けた動画まで作成し、その熱が冷めることはありません。
西原町まちづくり推進協議会 新田宗信さん
「MICEの誘致に伴って、モノレールの延伸は必須だろうと」
ゆいレール誘致を進める、西原町まちづくり推進協議会の新田宗信さんは、路線の延長に期待を寄せます。
西原町まちづくり推進協議会 新田宗信さん
「MICEを誘致して経済効果が地域の方々にもしっかり波及できる社会資本整備も必要だという所から、大型輸送施設の確保は必須だと思う」

2028年度、西原町には国際的な会議や展示会に対応したMICE施設が開業予定で、開業後は施設利用者の移動手段の確保が課題となります。加えて、慢性的な渋滞に悩まされていることから、住民の移動手段の1つとして、延長を望む声は絶えません。
協議会では、具体的なルートも提案しています。てだこ浦西駅からレールを延ばし、県道拡幅が進む西原町の坂田に新たな駅を。続いて町の中心地には、商業施設直結の駅を設け、東海岸まで伸ばし、MICE施設まで延長する案です。
池袋駅などをモデルに、オフィスが入居できる駅ビルや宿泊施設を整備するなど、夢は膨らみます。

西原町まちづくり推進協議会 新田宗信さん
「ただ引っ張ればいいということではなくて、引っ張るからには経済効果をどう組み立てていくかが重要だと思う。使いようによっては輝くまちづくりにつなげることが可能かなと思う」
浦西自治会 宜野座富夫会長
「地域のランドマークだと我々言っているんですけど、商業施設もできて、人々がたくさん行き交う場所になるということで、人々が集うにぎやかな街になるなと期待しています」
地域住民の夢と希望をのせて走るゆいレール。沖縄経済の牽引車のレールは、今後、どこに延びていくのでしょうか。