先月12日、沖縄の一般市民の人々100人の生活史を記した『沖縄の生活史』が出版されました。この本を出版した意義はなんなのか、執筆に携わった人々を取材しました。
およそ850ページにおよぶ分厚い本。こちらを開くと目に入ってくるのは証言の数々です。

本に記された市民らのコメント「5年生ぐらいの時に方言を使わなかった子で表彰されたわけ」
「仕事も全部覚えて来ている時だから、26歳ぐらいだと思うけど、その頃に偽札が横行したのよ、20ドル札の偽札が」
「復帰記念メダル貰った。メダル、学校からみんなに。お祭り騒ぎだったかな」
1冊の本にまとめられた、沖縄の人々の人生の記憶。今月12日、沖縄の一般市民の人々、100人分の生活史を記した『沖縄の生活史』が出版されました。

沖縄の復帰50年を節目に「沖縄の歴史とともに生きてきた人々の人生を聞き取り、文章に残そう」と、沖縄タイムス社の企画で始まったプロジェクトで、今月20日に出版を記念したシンポジウムが開かれ、執筆に携わった人など、およそ30人が今回の出版にこぎつけた意義を強調しました。
岸政彦 京都大学教授「権力者とかその偉い人とか、有名な人の語りはいっぱい残っているわけですけど、一般の方のそれぞれの人生の語りを聞いて残すっていうこと自体に僕はもう意義がものすごいあると思います」
このプロジェクトに一般から応募した100人の聞き手が、それぞれ語り手として選んだ、親や祖父母など、身近な人から聞き取った話を、1人あたりおよそ1万字にまとめられています。
母から話を聞いた 真境名育恵さん「母から見て祖父母はどういうふうに本土復帰を捉えていたんですかって聞いたら、復帰したら大きな商店が県外から来て、沖縄の小売り業は立ち行かなくなるねって」
両親の友人から話を聞いた 具志堅大樹さん「復帰の日何してました?と質問したところ、当日はデートの約束してましたと。復帰の日は日常の続きの中の1日っていう語りなのかっていう印象」
沖縄戦の犠牲や、戦後の厳しい暮らし、復帰による劇的な変化など、特別な歴史を折り重ねてきた沖縄。そんな特別な島に暮らした人々はどのような人生を送ってきたのか。1つとして同じものがない物語が、読む人の目をくぎ付けにします。

従妹に話をした玉城千代子さん「よかったなって思っています。いろんなこと聞いてもらって、私としてはちょっと言いたくない事もあったんですけど、きれいに纏めてもらえてありがたいなと思いました」
沖縄に暮らした100人の歴史が詰まった『沖縄の生活史』。ページをめくれば、そこには懐かしい沖縄の姿が、一人ひとりの視点から、鮮やかに描かれています。