悪夢の光景 子どもを殺してしまう
そして1988年4月、4回目の出産で「信じられない光景」が起きました。元気に生まれ、水面へ泳ぎ、水面に上がろうとした赤ちゃんを、オキちゃんが上から押さえ込む仕草が見られたのです。4番目の赤ちゃんは呼吸が続かず、死んでしまいました。
「はっきり言って、普通イルカがそんな行動をすることはないのでね。信じられなかったですね。何が起きたんだと思いました」
長﨑さんはその後、この異常行動の原因を分析しました。死産が続き、赤ちゃんを強制的に回収される経験が積み重なる中で、オキちゃんの心に「出産すると、係員に赤ちゃんを奪われる」という、強い思い込みが生まれてしまったのではないか。そして赤ちゃんが元気に泳ぎまわって水面に近づくと、「奪われる危機」が迫ってくると思い、とっさに押さえこんでしまったのではないか―― それが、人間に赤ちゃんを奪われないためのオキちゃんなりの解決策だったと、長﨑さんは考えました。
「沈めてますね…」
現在の海洋博公園で飼育に携わる海獣課の古網雅也さんも、当時の映像を見て「支えたい気持ちはあるけど、取られたくないというのが前面に出ている」と、オキちゃんの心の葛藤を感じ取りました。











