沖縄戦の混乱のなか、国外へと持ち出された琉球の歴代の国王を描いた肖像画=御後絵(おごえ)などの貴重な文化財が先月、アメリカから沖縄に返還され、先月30日、報道陣に公開されました。

去年、アメリカの連邦捜査局・FBIが、盗難美術品リストに掲載されていた文化財を発見し、戦後79年の時を経て、沖縄へと戻ったのです。「流出文化財」の返還に至るまでには、長い年月に渡る多くの関係者の奮闘がありました。RBCは、在沖米国総領事館に勤め、返還の功労者となった人物に聞きました。

玉城デニー知事
「御後絵は琉球王国を代表する貴重な文化遺産。当時の色彩を確認できるようになったことは、今後の琉球・沖縄の美術史、文化史の研究を進める上で、重要な手がかりになると、期待をしております」

80年近くの時を経て、沖縄へと戻ってきた、貴重な琉球王国当時の文化財。特に、歴代国王の肖像画である「御後絵」は琉球王国を象徴するもので、世紀の発見だと言われています。

御後絵

戦前の首里城には、20枚の御後絵が飾られていました。しかし沖縄戦の混乱により、すべてが消失したと思われていました。これまでは、戦前に沖縄の文化を研究していた鎌倉芳太郎氏が撮影した白黒写真でしか、確認ができませんでした。

米国総領事館で広報文化担当補佐官をしていた高安藤さんは、色鮮やかな御後絵がふるさと・沖縄に戻ってくることを心待ちにしていました。

高安藤さん
「まだ極秘の頃、ある人から電話がありまして「見つかったかもしれない、確認はされてないけど」って電話があったんですよ。もうそれ聞いたときは涙が出てきました」

高安さんが初めて流出文化財に関心を持ったのは、1998年。海洋博公園管理財団が主催したシンポジウムで、1000点を超える文化財が沖縄戦による混乱で国外へ散逸している事実を知りました。

高安藤さん
「やっぱり関心があって。浪漫があるじゃないですか、盗まれていた沖縄の宝物が、まだ見つかっていない、それを見つけ出したいと。特に米国の政府には再認識してほしいというのがあってそれを提案した」

2000年、沖縄サミットの前には来沖したクリントン大統領へ、文化財の捜索や返還を依頼。また、アメリカ国内の沖縄のコレクションを使った里帰り展の開催を要望しました。

当時、高安さんの提案は叶いませんでしたが、その後も流出文化財の勉強を続け、各関係機関に働きかけを続けた結果、FBIに「盗難美術品ファイル」として登録されるきっかけを作りました。


高安藤さん
「涙が出るほどうれしかった。やっぱり登録リストに載っていたっていうおかげかなと思います。私もきっかけは作ったんですけども、その国務省の、担当官の機転の利いた提案は大変、いま、あの時も嬉しかったんですけれども、大変嬉しいですよね」