今年は4年ぶりに花見を楽しんだ方も多いかもしれませんが、サクラの代表品種である「ソメイヨシノ」は今、全国的に問題を抱えています。各地で植え替えが進む現状を取材しました。
大分県の南部に位置する豊後大野市の桜の名所「御嶽山 桜ロード」。花の時期には県の内外から見物客が訪れ、多くの人を楽しませますが…
(清川まちづくり協議会・衛藤孝典会長)「くもの巣みたいになっているのがソメイヨシノ特徴の病気のてんぐ巣病です」
サクラの木々をよく見ると枝が異常に密集していて、「てんぐ巣病」という伝染病にかかっている木が目立ちます。

(衛藤孝典会長)「この木はあちこちてんぐ巣病の病気が出て、もう枯れ始めました。(花がつくことは)ないですね」
今から55年ほど前、サクラの名所を作ろうと地元の老人会が整備した御嶽山桜ロード。かつてはおよそ3000本のソメイヨシノが咲き誇っていましたが…

寿命を迎えたものやてんぐ巣病により木が弱り、半数以下にまで減ってしまっています。

一方、大分市の平成森林公園のサクラ園でもてんぐ巣病にかかっている木が目立ちます。
「ソメイヨシノ」はクローンで病気に耐えられず抵抗力がない
(大分県樹木医会・田邊勇会長)「ソメイヨシノは60年間くらいの寿命と言われていたが、現実にはこの木は40年くらいだけどだんだん弱ってくる」
ソメイヨシノは接ぎ木や挿し木によって全国に普及したため、どの個体も遺伝情報が同じです。このため病気に強い個体はできず、伝染病のまん延を防ぐことが難しいと樹木医は指摘します。

(田邊勇会長)「他の山桜や大島桜はいろいろ病気にかかったとしても、それに耐えようとして次から出るのは耐える力を持っています。だがソメイヨシノはクローンなので耐えられないし、新しく抵抗する力はない」

およそ60年にわたり全国のサクラの名所づくりを支えてきた公益財団法人「日本花の会」では2005年からソメイヨシノの苗木の配布を中止しているといいます。