描かれている21の動物の心臓の鼓動に合わせて点滅する画面──

それぞれの鼓動に合わせてリズムが刻まれた音楽が流れています。

普段目に見えない鼓動を可視化することで、動物たちの命が有限であることを伝えようと制作されました。

こうしたデジタルアートに取り組む女性が長崎市にいます。
創作活動の背景にある経験と思いを取材しました。

一見すると花のようにも見えるこの作品。

北島志織さん:
太陽の日照時間と幸福度の関係を調べたものです。それぞれの国の──
このピンク色の部分が幸福度ですね。この後ろにある赤い部分が太陽の日照時間です。それが一目で比べて見られるようになっています」

これらは『インフォグラフィック』と呼ばれるアート作品です。

情報を意味する『information』と視覚表現の『graphics』を合わせた言葉で、わかりづらいデータや情報を、図やイラストで視覚的に表現します。

ビジュアル制作は “ご飯を作る” ようなもの

PATTERN BASED 北島 志織さん(45):
「ぱっと見、これでは本当に絵のように見えますけれども、いろんな情報が隠れています」

作品を制作しているのは、長崎市に住む北島志織さん(45)です。

北島志織さん:「あの辺は私が描いたものです」

東京生まれの北島さんは、画家だった祖父の影響で、5歳のころから絵を描き始めました。

10代でアーティストとして仕事を始め、雑誌の表紙やコラム漫画などを手掛けてきました。

北島志織さん:
「本当にずっとやっているので ──
絵を描くことだったりとか、物を作ったり、そのビジュアルを作ることですかね。それは本当に毎日ご飯を作るようなものです」

30代になってアートの最先端で絵を学ぼうと単身ニューヨークへ。

その後も、シドニーやサンフランシスコなどで創作活動を続けました。

“静止画”から “どう動かす” へ そして テーマは──

北島さんがいま握っているのは、筆ではなく、マウスです。

北島志織さん:
「時代的に出版業界から “(ビジネスフィールドを)インターネットに”っていう流れが全体的にあったんです──
なので、“デジタルでの仕事”が増えてきたっていうのがまず一つ大きかったのと、デジタルで絵を描いてみたところから、これ“動かす”にはどうしたらいいだろうって」

デジタルアートの世界に足を踏み入れた北島さん。

海外で感じた日本とのギャップが、作品作りへ影響を与えます。

北島志織さん:
「社会問題ですとか政治についての話をすることがとても普通というか、もっと当たり前、身近なものなんですね。
例えば、アメリカの若い人たちは自分がリサーチした社会問題についての内容をTikTokで発信したり、あと自分のアイデンティティについての意見を言ったりみたいなことが、もうほとんど流行のような、それが当たり前のような感じになっていて」

社会問題を提起し 発信することが当たり前

2021年、北島さんがサンフランシスコで生活中に作った作品 ──

画像の中で“アメリカ国内の殺人件数”と”銃の売り上げの数”がグラフで対比され、

その時、どんなニュースが世の中で起きていたかを表しています。

北島志織さん:
「例えば、襲撃事件みたいなのが出た後に、銃の売り上げが増えたりするんですよね。そうするとその後、やっぱりその不安で身を守ろうとして銃を購入する人が増えて。
悪循環でその後にまた自然と犯罪件数が上がってっていう関連性をちょっと表現したくて」

パートナーと所縁もない “長崎” へ移住

北島さんの今の制作拠点は長崎です。
去年5月に、夫で作曲家のジョセフさんと移り住みました。

二人にとって縁もゆかりもなかった土地ですが、“自然の豊かさ”と“文化”が入り交ざるまちに魅了されました。

北島 志織さん:
「まず景色がものすごく良くて。やっぱり高低差があるのが大きいと思うんですけど、見通し、見晴らしがとってもいいですよね。
ご飯も美味しいし、人も温かいですし」

新たな情報で “これはこうなんだね”と意見を交わすことは楽しい

長崎に来て9か月。北島さんはいま『原爆の恐ろしさ』を伝える作品に取り組み始めました。

北島志織さん:
「これが起こったとき(原爆が投下されたとき)あなたの場所であればこうなんだよ(どのような被害があるか)ということがビジュアルでわかるような。地図を使ってですね」

移住して見えてきた、長崎の歴史や課題──

多くの情報を作品1つで表現する インフォグラフィック アーティストとして、これらを世界に発信する使命を感じています。

北島志織さん:
「原爆というあの出来事がどういうことだったのかということを、世界中の人たちにもう少しリアルに伝えられるようなことができたらいいなと思っています。
新しい情報を見て“これはこうなんだね”と意見を交わすことってやっぱり楽しいと思うんです。
若い世代の方々の助けになれるような情報を提供したり、きっかけを与えることができたら良いなっていうのはずっと思ってます」

世の中に山積する課題をもっと身近に!
北島さんはアートの力で人々と社会を結びます。

北島さんは他にも五島市沖で設置が進む『洋上風力発電』も作品のテーマにしたいと考えていて、長崎での成功例や現状をデジタルで世界に発信することが世界をより良くしていくことにも長崎を盛り上げていくことにも繋がると話していました。