長崎NEXTスタイル、今回は長崎県五島市で進められている洋上風力発電事業の今について取り上げます。洋上風力発電を巡っては、設置可能な海域を排他的経済水域まで広げるための改正法案を今月、内閣が閣議決定するなど、国も力を入れています。

こうした中、五島市では洋上風力発電の事業拡大とともに、関連産業を地元の新しい産業として育てる動きが広がっています。

風の力で電気を生み出す五島沖の「浮体式洋上風力発電」

国の実証実験を手がけた戸田建設は、5年前から風車8基を並べて発電する「ウィンドファーム」構想を掲げ事業を拡大しています。

浮体式洋上風力発電は、羽の先から海中にある末端まで全長およそ170メートル。五島市の福江港に整備されたおよそ2万平方メートルの建造作業場には、長さ39メートルの羽根など巨大な風車の部品が並んでいます。

この筒状の部品は水中の浮体部分で、鋼とコンクリートでできています。地元企業から調達したコンクリートを使うことでコスト削減に成功しました。

組み立てや運搬などにあたる作業員は県の内外から来ていて、その数は多いときでおよそ150人になります。

国内ではまだ前例が無いことから戸田建設の新川泰弘さんは、計画段階から心配が尽きなかったと振り返ります。

戸田建設五島洋上風力プロジェクト部工事長・新川泰弘技術士
「スケールも壮大なので、最初は不安要素がかなりあったんですが、何とかここまで来たかなと」

浮体部分は台船で運ばれ、海上で組み立てられます。

「おきあがりこぼし」のようにバランスを保ち、台風などで海が荒れても倒れないよう設計されています。

風車1基の重さはおよそ3500トン。中の空洞部分に砂や海水を入れて重心を低くすることで、安定して水に浮かばせることができます。

風車は水深120メートルの海底に置いた3個の重りとチェーンでつなぐため、流されることはなく、海の中では漁礁としても役に立っています。

戸田建設はことし5月までに残り2基の風車を設置し、今年秋頃までに全8基の試運転を始める計画です。

戸田建設五島洋上風力プロジェクト部工事長・新川泰弘技術士
「最後まで油断せずにきちんとしたものを最後までつくりたいと思いますので、最後までやり抜きたいと思っています」